過去最低レベルとなった公明比例票

この参議院選挙で公明党は7選挙区で全勝、比例区で予定より1人減らしたくらいで万々歳という評価がある一方、全国比例票はかなり深刻な事態となっている。今回とった全国比例618万票という数は、比例代表制が採用された83年以降、公明党にとって国政選挙で最悪の数字に近いからだ。最も「底」となったのが1989年の609万票。前年の88年から公明党国会議員の汚職事件が次々と明らかになり、極めつけは当時の矢野元委員長自身の疑獄に発展し、公明党全体が半ば“火だるま”状態となって行った選挙だった。そのときの609万にほぼ等しい数字だから、過去最低レベルに落ちたということがいえる。一つはよく言われる高齢化の波だ。これは日本全国共通の現象なので、何も公明党だけの問題ではない。さらに今回は自民党が比較的安定していたので、票のバーターがうまく機能しなかったという点は指摘されている。内部的な要因をあげれば、与党入り後の政策において象徴的なものがないことも挙げられる。以前ここでも書いたが「旗印」のようなものが鮮明でないのだ。要するに引きつける魅力に乏しい。特にそれは理念型の政策において顕著で、国家レベルの行政が公文書改ざんを行っても大した歯止めもかけず放置し、社会にヘイトスピーチや民族差別が蔓延するような状況になっても大した手を打たないなど、社会状況に関する無関心さが個人的には感じられる。支持者が第一義の目的とするのは「社会をよい方向に変えてほしい」からなのであって、選挙で勝つことは、実際は二次的な要素にすぎない。私が目的と手段の混同といっているのはそういうことだ。公明党が選挙で勝ったところで社会状況はどんどん悪化する。安倍政治においてこうしたジレンマに悩んできた支持者は一定数いるはずだ。

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