中国のゼロコロナ政策は当初は成功談として喧伝することで中国の国家としての求心力を高める働きをしたが、今では完全に裏目に出ようとしている。致死率が一定程度あった当初の感染株に比べ、感染力は強いものの致死率の低い状態のオミクロン株では状況がまったく異なるからだ。だが一党支配の中国では、状況に合わせた政策変更ができにくい。その結果、次期首相の呼び声が高かったとされる上海市のトップの首相就任の芽もほぼなくなりつつあるようだ。それだけでなくこの事態が広がれば、11月に党大会を控える中国最高指導部にとって、自分たちの立場も危うくなりかねない。これから半年間、中国は試練の時期を迎える。オミクロン株が上海にとどまらず、全土で広がって似たような事態が拡散すれば、体制崩壊にも結び付きかねない。そもそも疫病対策の観点からも、ゼロコロナ政策は「集団免疫」を獲得できないままの社会状態を放置するだけで、対策の終着点が見通しにくい。ロシア問題にとどまらず、中国が世界経済の破滅の呼び水となる可能性がある。