歴史改竄主義の横行

第二次安倍政権ができる前だったと記憶しているが、ある雑誌の取材で南京大虐殺に関する右派系の集会を訪れた。南京虐殺については、歴史学会では存在したことはすでに確定しており、識者によって犠牲者数に幅があるという状況だったが、この集会はいわゆるゼロ説(なかった説)をとっていた。当時はトンデモ主張という位置づけだったが、この集会に安倍晋三氏が祝辞だがメッセージだかを寄せ、司会者の女性が紹介したことを覚えている。私は同行していた担当編集者と思わず顔を見合わせたものだ。そうした人物がその後、最高指導者として長年君臨したためか、この国の歴史認識はまったくおかしなものになってしまった。歴史的史実に関係なく、自分の思惑にすぎない主張が、それにとってかわるかのような風潮が容易に生じてしまったからである。

今回の佐渡金山の世界遺産推薦問題も、その延長線上の出来事にすぎない。陰で動いたのが安倍元首相であったことが報じられている。戦前・戦中、佐渡鉱山において朝鮮人労働者が強制労働されられたことは歴史的史実だ。だがこうした史実を否定したい産経新聞記者などは話をすり替え、「韓国が『韓国人の強制労働の被害現場だ』と虚偽に基づく宣伝戦を仕掛けている」(阿比留瑠比の極言御免、2022年1月27日付産経新聞)などと、姑息なゴマカシの宣伝を行っている。

社論として南京虐殺はなかったという立場をとる日本で唯一の全国紙・産経新聞(しかも同新聞社は以前は南京虐殺を認めていた)に、歴史認識問題における信用性はなきに等しいともいえるが、安倍応援団の歴史の改竄のひどさは今に始まったことではない。 ウソは暴力の入り口であり、戦争の入り口だ。政権与党の公明党が歴史改竄主義と何ら戦おうとしない姿は、この国をいったいどこに導きたいのかという点で大きな疑問を覚える。

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