昨年9月、沖縄空手に関する書物を発刊させていただいた。その時点での真実と思われる内容をもとに記述しているが、最近の空手史研究においては、通説を覆すさまざまな発見が生まれている。その一つが「日本最初の空手流派は剛柔流」という通説だ。確かに今に残る大きな流派という意味では剛柔流が正しいが、実は剛柔流がうまれる1930年以前に、すでに空手流派名を名乗っていた人たちが複数存在することが明らかになっている。こうした事例は実は多くあると見られる。一つはこの分野が学問として確立されてこなかったためで、空手家の中で関心をもった人たちがそれぞれの研究成果を個別に発表し、その内容について精査されないままこれまで来たという経緯が大きい。現在の沖縄県は空手振興課をもうけて行政としてもそうした研究を進めており、今後ともこうした史実の発見が続いていくものと見られる。