産経新聞の阿部雅美・元社会部記者の北朝鮮による日本人拉致をめぐる最初の報道およびその後の流れについての産経新聞連載は、読み応えがあった。メディア人であった本人の自責の念もまじえた謙虚なタッチの述懐であり、好感のもてる筆致だった。だがその連載を一冊にした書籍のタイトルを本日付の産経新聞紙上の広告で見て、がっかりした気分である。
そこには『メディアは死んでいた』というタイトルが掲載され、要するに産経新聞がこの報道の嚆矢となった、ほかのメディアは全部だめだったという自画自賛、唯我独尊ぶりを象徴するようなタイトルであったからである。これでは阿部元記者の真摯な苦労が壊されてしまいかねないと感じたのは私だけの特殊な感情であろうか。
筆者の謙虚なペンが、出版責任者側の意図によって、台無しにされているケースと思われてならない。
こうした唯我独尊的プロパガンダは、左翼の一部政党がよく使う手法にほかならない。右も左も、実際の本質は、似たり寄ったりと感じさせるような出来事だ。