白鳥事件究明を再燃させるきっかけとなった共産党関係者

小生は学生時代、ノンフィクション研究会というサークルに所属した。伝統を持つサークルではなく、同級生が立ち上げたグループに誘われて参加したのだ。すでに今は存在しないと思う。小説に対比した形のノンフィクションが注目された時期で、学生サークルの気安さからさまざまな現役職業人に会いに行った。柳田邦男、沢木耕太郎、鎌田慧などの先輩方だったが、その中に和多田進という人物がいた。私は近年、日本共産党に関する取材を進める中で、『白鳥事件』(山田清三郎、新風舎文庫、二〇〇五年)を手にしたとき、その解説(かなり長いもの)をその和多田氏が書いているのを見て懐かしく感じた。元日本共産党員であり、『週刊金曜日』という現存する雑誌媒体を立ち上げた人物として知られる同氏は、白鳥事件の最後の証言者といわれる高安知彦氏にかなり長いインタビューを行っている。いうなれば、和多田氏も日本共産党員(そのころ党籍があったかどうかは知らない)の立場で、同党が起こしたとされてきた白鳥事件について、改めて問題提起した内容となっていた。その後私が札幌市在住の高安氏を取材で訪ねた際、この和多田インタビューが事件を再度掘り起こすきっかけとなったと教えてくれた。事実、二〇一〇年代に入ると、白鳥事件が日本共産党が組織的に起こした謀略殺人事件であったことが、事実上確定される形となった。日本共産党が最後まで、逃げて逃げて隠し通したかった「白鳥事件」を、事実をもって「最後の一打」として証明するきっかけとなったのは、ここでも日本共産党員だった。朝鮮戦争の開戦の真実を解明した萩原遼氏とともに、党派よりも真実を尊重した姿勢に、私は言論人としての矜持を見る思いがする。

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