ヘイト本を拡張したメディア関係者たち

新聞各紙を見ていると、いまだに「新潮45」の休刊に関する記事や論考が途切れない。この問題は、時代の一つのエポックとなる可能性がある。

というのも近年、嫌中嫌韓などのヘイト本が売れるようになり、売上げの伸びないメディアはこうした論調になびくようになった。戦争中に、売れるからという理由だけでどんどん勇ましい記事を載せて、戦争拡大に加担していったかつての新聞メディアの論理と何ら変わりはない。

近年のヘイト本が生まれる土壌となったのは、筆者の見解では月刊誌『WiLL』の登場からだ。現在、後継誌の『Hanada』との2誌体制となっているが、この種のヘイト雑誌が売れるようになり、さらにそれが書籍にも拡大し、ひいては講談社のような大手出版社までも浅はかな風潮にのってヘイトまがいの書籍を出版するようになった。それが今回、新潮社の一部にも及んだということにすぎない。

現在、『WiLL』や『Hanada』は月1回、大々的な書籍広告を掲載し、その掲載は産経や読売などの右派系メディアだけでなく、沖縄タイムスなど左派系メディアにも浸透している。在京の左派系メディアとして知られる東京新聞にヘイト本の書籍広告が載ったのを見た際は、時代もここまで来たのかと思わせた。売れるためなら思想信条に関係なく掲載するかのような風潮は、戦争中のメディアをほうふつさせるからだ。

今回の「新潮45」の休刊騒ぎは、そのようなヘイト本の野放しの状況に一石を投じる意味をもったという点で、後世に現代をふり返る際に、時代を分ける出来事として位置づけられる可能性がある。

つまり、現在こそがヘイト本の全盛期(クライマックス地点)であり、今後はこうした風潮は薄れることはあるにせよ、これ以上進むことはないとの、筆者の浅はかな願望入りの観測である。昨今、沖縄県知事選の結果がかぶさったので、余計にそのような思いを強くする。

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