成立させるには乱暴な審議を余儀なくされる共謀罪法案

3月21日、政府は犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。全国紙(夕刊)はいずれも1面トップでそのニュースを掲載した。特徴的なのは朝日、毎日、東京がいずれも「共謀罪」の大見出しを打っているのに対し、読売だけが共謀罪の呼称を使わず、「テロ準備罪法案」と書いていることだ。では日経はどうかと確認してみると、こちらも「共謀罪」を使っている。22日付朝刊では産経は「テロ準備罪法案」を使っているから(この新聞は夕刊がない)、法案の呼び方からして、朝日・毎日・東京・日経と読売・産経が対照的な構図となっている。この構図は、さまざまな対決法案において繰り返されてきたものとほぼ変わらない。

さて閣議決定された法案だが、朝日では「与党は4月中旬に審議入りし、今国会での成立をめざす」と説明しているのに対し、産経では「4月上旬にも法案を衆院法務委員会で審議入りさせたい考え」と書いている。いずれにせよ4月から審議入りすることは予定としては間違いないようだ。ところで会期末は6月18日。後ろに東京都議会選挙を控えているので、会期延長は難しい。5月の大型連休を考慮すると、審議時間は極めて限られたものになりそうだ。自民党の二階幹事長は「審議できない日程ではない」と言明したらしいが、審議時間は各院で一カ月程度のスピード審議とならざるをえず、十分な審議はとうていできそうにない。特定秘密保護法のときのように、乱暴な審議を何回か行った上で、強行採決を繰り返すしか成立の方法はなさそうだ。

ところでこの法案、共謀罪を新設したからといって、テロがなくなるわけでは到底ないことは周知のとおりだ。なぜなら共謀罪がある国で、国際的なテロは今も頻発しているからだ。その意味では、羊頭狗肉の最たる法案なのだが、そんなやり方で、刑法概念を根本から変更する重要法案を「処理」されたら、将来を生きる国民・住民はたまったものではないだろう。

 

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