講談社現代新書『「陰の総理」と呼ばれた男』

表題の書籍を昨日読了した。野中広務が逝去して1年たつからか、テレビ番組でも再放送の特集をたまたま目にした。今さら同氏に関する本を手にとったのは、京都の地方政治家時代の共産党との戦いを今一度確認するためである。戦中軍部一辺倒となって塗炭の苦しみを味わった日本人が戦後は共産党に一辺倒となる姿に危機感を覚えたようだ。同書ではさらに国政に進出し、すでに旧知の事柄ながら公明党を攻撃した際の話もいろいろと出てくる。そのはてに、自民と公明の連立をつくったのは野中であり、そのため、いまの「安倍一強」をつくった責任を野中に見立てているのも本書の特徴だろう。野中が公明党との連立を考えた理由は、「公明党は政策がブレないから」と紹介されている。他の政党に比べてそういうことは確かにいえるのだろう。野中としては、それが連立を組む際の重要な特質に映ったようだ。とはいえ、本書の出版目的はそのようなところにあるわけではない。再び戦争に向かう国造りが進んでいる昨今、自らの戦争体験を踏まえて死ぬまで信念を貫き通した老政治家の半生を振り返ることで、現在に重要なメッセージを投げかけている。

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