中国脅威論と冷静な空間

中国脅威論が盛んだ。極端な主張をする人間は将来、日本が中国の「属国」になるなどと平然と煽りつづける。その人物は台湾の次は沖縄が占領されるかのようなことまで述べる。煽れば煽るほど支持者が増えるので、便利この上ない打ち出の小づちだ。この「煽り商売」は一度始めたら止められない魔性を持っているようで、ますますエスカレートするばかりのようだ。その結果、中国に融和的な考えも併せ持つとされる岸田首相や林外相に対し、「親中」あるいは「媚中」というレッテル貼りを行い、大衆の意識を操作しようと必死だ。だがこうした安易なラベリング手法は、確かに自身の一時的な支持者を獲得することには成功しても、世の中のためにはなんら結びつかない。要するにジャーナリズムに必要な側面である「正確な情報の発信」という点からかけ離れているからだ。すでに右派勢力を中心に、来年2月の北京オリンピックを政治ボイコットせよだの、より強硬な措置をとれなどの主張がまかり通っている。公明党も中国と友好関係をもってきた歴史から、そうした批判の対象となっている。いまや「日中友好」の言葉さえ、言えば批判されるかのようなへんてこな空気が蔓延している。言論空間が「冷静さ」を失っていることだけははっきりしている。つまるところ、商売目的の「煽り屋」たちが、そのような静粛な空間を阻害しているからだ。議論は是々非々で、行われなければならない。こんな中、作家の佐藤優氏は11月27日付の琉球新報コラムで、林外相が中国を訪問し、中国の政治エリートや軍事エリートと人間的信頼関係を構築することの重要性を説いていた。外務官僚出身の現実に即した提案と感じる。

「煽り屋」は戦前にもこの国に存在した。そして国の進路を誤らせた。戦争を煽れば新聞が売れ、金儲けできる時代が過去にもあった。現在もそれと似たような状況が感じられる。過激で、民族的自尊心をくすぐるような言説がはびこる。そのほうが支持者を得やすいからだろう。いつか来た道を再び歩いていることは明白だろう。

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