コラム日記 - 記事一覧
http://www.yanagiharashigeo.com/html/modules/xpress/
| 発行日時 |
見出し |
|
2025/11/13 8:23
|
鬼畜の神州ニッポン
高市首相が自ら引き起こした「存立危機事態」問題は、日本と中国の近代以降の歴史を浮き彫りにする。駐大阪総領事の発言を問題視し日本から追い出せと叫んでいるグループ、人間たちは日中関係を「戦後」のレベルでしか見ていないことが明らかだ。そこでは戦前の日本がやらかした「不都合な真実」が見事に抜け落ちているか、敢えて見ないようにしている卑怯さがある。近代において、日本は本当にひどいことをした。私は歴史の専門家ではないが、それでも日中戦争において日本軍が土足で大陸に押しかけ、罪のない民衆に何をしたかの一端はわかっているつもりだ。当時、文化的に劣っていた中国を蔑視し、軽く扱い、すぐに決着するとばかりに中華民国の首都・南京を陥落させた事実は、近年ではすぐに征服できると考えてウクライナに攻め込んだプーチンの行動を考えればよく理解できるはずだ。今のロシアはかつての日本の姿そのものだった。だが自ら始めた日中戦争はすぐに終わらず、泥沼に入り込み、果ては勝ち目のない対米英戦争にまで突き進んだ。それらの意思決定において、天皇は時の軍部にいいように利用されたに過ぎない。高市首相は、これらの時代精神とほぼ同じ精神性の持ち主と見られている。靖国信仰にこだわる姿勢がその証明だ。同首相のことを「危険極まりない人物」と見ている投稿は、XなどのSNS上でも多く飛び交っている。「初の女性首相」という点は歴史的に評価されるだろうが、それ以外に評価できる点は乏しい。今や「高市首相の存在そのものが存立危機事態」との主張が説得力をもって響くのは、熟慮の上の的確・適切な判断能力に欠ける、為政者としての最も重要な資質における欠陥を浮き彫りにする。この政権は1年持てばいいほうかもしれない。
|
|
2025/11/12 9:15
|
「汚い首を斬る」発言について
中国の大阪総領事の発言が外交問題に発展した。発端は高市首相の初めての予算委員会審議で飛び出した存立危機事態に関する首相答弁だ。ここで高市氏は台湾海峡で中国が武力行使した場合、存立危機事態に該当する旨表明し、中国政府や関係者の反発を受けたのが真相だ。つまり、発端は高市首相側にある。中国政府の“尖兵役”となったのが大阪総領事で、次のようにXで発信した。「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」。首を斬るという表現が、現在の平和ボケした日本では不穏当に聞こえるため、日本側の大反発を招いたわけだが、日本がこの160年間、中国に何をなしてきたかをある程度、等身大で感じている人間が見れば、あるいは中国の立場に自分の身を移し替える余裕のある日本人からすれば、特に大きな違和感を感じない人もいるかもしれない。つまるところ、かつて日中戦争中、罪のない多くの中国人の首を斬り落としてきた張本人は、旧日本軍、つまり天皇の軍隊であったからだ。いまの日本人はそのような歴史的経緯をすっぽりと忘れているか、必要最低限の歴史教育をなされていないので、方向外れの反発をしているようにも私には思える。ましてこの大阪総領事が11月初旬に創価学会関西青年部主催の講演会で講演したいたとかで、創価学会や公明党までが糾弾の対象とされている。この総領事は日頃は普通のまともな感覚の持ち主のようだが、今回は、中国政府の“尖兵役”として確信犯的に行動したのだろう。日本社会を含む民主主義社会において言葉に適切性を欠いていたことは明らかだが、日本が過去に行った幾万もの非道な行為に鑑みれば、日本側が短絡的に「追放せよ」と言える問題ではないように感じる。双方とも、冷静になっていただきたい。繰り返すが、責任の発端は高市首相側にあり、日本側がこの問題で“勝てるケンカ”の構造とはなっていない。
|
|
2025/11/11 9:06
|
官房長官人事で失敗した高市早苗
第2次安倍政権は本人にとっても思いがけなく生まれた奇跡的誕生の政権だった。3年3カ月を共にした公明党も、同時に政権に復帰する。このとき創価学会は安倍晋三とは戸田第2代会長と安倍の祖父である岸信介が“親友”の時期があったという特別な関係ではあったが、政治信条は水と油で、政権を共にすることに不安がなかったといえばウソになるだろう。ただし、総裁選勝利への流れの中で官房長官に抜擢された菅義偉は、公明党の支援団体と直接的に野太いパイプを作り、政権を切り盛りした。それは選挙の得票を最大化するという安倍の考えにもマッチした行動でもあった。一方、高市政権はどうであったか。そもそも政治が「数の論理」であるという冷徹な自覚がはなはだ欠けていた。公明党は踏んでも付いて来る“下駄の雪”と侮っていた。そのためか、政府のかなめである官房長官に、公明党の支援を受けておらず、創価学会とも関係がよくないとされている人物を起用することに躊躇しなかった。仮にここに菅義偉までとはいわないまでも、教団とも気心の知れた人物を配置していたらどうなっただろうか。私の個人的な見解だが、連立解消はかなりの確率で回避されたと予測する。公明党側からすれば、パイプを最初から閉じた高市の政治姿勢からは、いずれ連立関係は行き詰まるとの達観があったと思われる。さらに高市の周りには門田隆将のように政治のイロハを弁えていないのに、ラウドスピーカーだけのうろんなタイプが控えていた。最初から「失敗」が約束されていたようなものだ。人間は付き合う交友関係のレベルによって仕事の結果が変わってくる。今回はその「定石」が証明されたにすぎない。
|
|
2025/11/10 8:39
|
自民党惨敗に終わった葛飾区議選
高市早苗政権の圧倒的な内閣支持率の高さのもとで行われた東京・葛飾区議選だったが、自民党は予想外の“大惨敗”の結果に終わった。同党の落選者は現職3人を含む7人におよび、ほかに立憲民主、共産とも現職をそれぞれ落とした。一方、前回9人を立てて1人を取りこぼしていた公明党は、前回落選者を含む8人全員を当選させ、「完勝」を果たした。国会ではいまの高市政権の圧倒的支持率のもとで衆院解散を打てば自民は勝利するという見立てがあったが、根拠が薄いことが明らかとなった。政党支持率は回復していないことが明らかだ。
葛飾区議会議員選挙の開票状況|葛飾区公式サイト
|
|
2025/11/9 8:17
|
目的と手段が混同される国民的影響
ジャーナリストの仕事の本質は知らせるべきことを広く知らせる使命にある。キリスト教の信者はキリスト教を悪く書くことには一瞬ためらいを持つだろう。私のジャーナリストとしての感覚では、創価学会の公明党支援の最大の問題点は以下にあると考えている。それは、教団の政治との関わりが短期的視点に陥りがちなことだ。これは教団の歴史性と社会的要求から起きているように感じる。選挙で勝利することがそのまま教団の威信を世に示すことにつながるという発想があるためか、選挙の勝敗は担当する教団幹部(主に方面)の勤務評定に直結する。そのため何のために政治支援するかという「大目的」が後方に下がりがちとなり、目先の選挙勝利という「手段」が優先される結果につながりやすい。要するに手段と目的の混同、転倒の問題にほかならない。私は大目的を追求した支援体勢がなされていれば、どの分野にも満遍なくエキスパートが国会議員に配置されていたと思うし、国の最重要問題の一つである少子化問題も、公明党が23年間も政権運営に携わった以上、すでに解決に向かっていた可能性が高いと感じている。大きな戦略の欠如が、この事態(政治支援の非効率性)をもたらしたように見受けられる。これは一政党の内部問題というより、国民全体に影響を及ぼしている問題だ。
|
|
2025/11/8 6:29
|
「ルールを守らない」の定義
ことし夏の参院選でとびかった外国人問題。政府与党側は「ルールを守らない外国人に厳しく対処する」と世論向けピーアールを繰り返したが、この「ルール」なる用語は欺瞞そのものだった。この場合のルールには①刑法②入管法③マナーの3種類があるが、これらをごたまぜに「ルール」とまとめることで、外国人対策のやってる感をアピールする意図があった。好ましくない外国人はいうまでもなく刑法犯であって、そのような外国人を帰国させることに異議を唱える者はいないと思う。さらに3つめのマナーの問題だが、よく出されるゴミの出し方などの生活上のルールについては、本人の問題というより、受入国側がどのような配慮の下に当事者に告知教育するかという問題であって、それをもって強制送還の要因に数えることは乱暴そのものだ。肝心は2つめの入管法だが、この法律によってビザなし外国人は「不法滞在者」と規定される。入管庁はかつてこの人数を減らすために毎年1万人の「不法滞在者」を正規化する“苦肉の策”で数を減らした過去がある。その数「5万人」だ。その結果、日本の治安が悪くなったという統計は皆無に等しい。要するに彼らは罪のない外国人をスケープゴート化することで、争点そらしを行ったにすぎない。かつて第2次安倍政権の当初に、生活保護者をスケープゴート化したのと同じ手法だった。日本の有権者は騙されないよう賢くなっていかなければならない。
|
|
2025/11/7 8:49
|
数の力
数の力をだれよりも身に染みて感じ、それを活用した政治家は近年では安倍晋三の右に出る者はいないと思う。その原体験はやはり初めての戦後世代の総理大臣として期待されながらも無様な退任を余儀なくされた第1次政権の経験にある。このときの参院選挙は“年金未納選挙”の様相を呈し、政治家の中で年金を過去にきちんと支払っていない期間があることが明らかになった議員は世論から徹底糾弾されるという異常な雰囲気の中で行われた。この選挙で大敗北した自民党は、参議院で過半数を失い、国会はねじれる。敗北しながら政権運営を継続しようとした安倍は、持病に倒れる。この時点で、保守(実際は極右)から総スカンを食らった安倍は、二度と浮上することができない「過去の政治家」として見られつづけた。その安倍がひょんなことから第2次安倍政権を確立し、長期政権を担ったのは、最初の「失敗体験」があったがゆえである。「政治は数なり」を小沢一郎並みに身に染みて叩きこまれた安倍は、投票マシンとしての公明党創価学会に気をつかい、さらにこれまで忌避していた統一教会にまで支援を頼んだ。選挙で「勝てば官軍」の精神が貫かれたのが第2次安倍政権の特徴だったといえる。その結果、政治スパンは中長期を展望するものではなく、目先の選挙を勝利する短期スパンで徹底された。その弊害はいまも色濃く残る。安倍政権が脱原発にかじを切らなかった責任は、文明論的次元で大きな罪として歴史に記録されることになるはずだ。公明党はこのとき、大した物言いはできない立場にあった。第2次政権のポピュリズムの風に乗って、生活保護者叩きが行われたが、公明党は弱者を守るためには行動しなかった。保身を優先したからだ。そのときの政策が、最高裁で違憲と判断されても、石破自公政権はその後始末をスピードをもって行おうとはしなかった。「負けを認めない」戦後の日本政府の体質とも通底する。この問題処理は、次の高市政権に引き継がれたが、もともと生活保護者をバッシングした張本人が高市早苗と片山さつきだった。その主謀者がいまは首相と財務大臣の椅子に座っているので、最高裁判決が ますます 軽視される事態となっている。その意味で、日本に「三権分立」が根づいていない実態は明らかだ。ここに“政府崩壊”のアメリカを笑っていられない日本の現状がある。公明党は弱者の側に立つという立党精神を、第2次安倍政権のスタート時点において発揮することができなかった。その余燼はいまもくすぶっている。
|
|
2025/11/6 8:20
|
コインの表と裏
夏の参議院選挙で争点となった外国人問題。ただしこのテーマは選挙用に外国人をスケープゴート化することで優位に立とうとする議員心理を超える動きではなかった。その流れを高市政権はそのまま引き継いでいる。大事なことは「事実」を基にすることであり、最初からそこがあやふやなままの政策にすぎなかった。自公入管が3者一体となって立案した「不法滞在者ゼロプラン」もその典型だろう。昨日付東京夕刊によると、日本のオーバーステイ外国人は7万人、一方韓国は40万人ながら、日本は「不法滞在者」をスケープゴートにして撲滅プランを作成した。しかもプランの内容は半減させる中身にすぎないのに、「ゼロ」を謳った。やっているフリを見せるための選挙対策の何よりの証明だ。このような政府挙げての外国人排斥行動は、自分たち(日本人為政者)は悪くない、社会は外国人が悪くしたとする責任ずらしの手法と一体化している。ここで私が述べたいのは、そうした責任逃れの心理は、かつての昭和の戦争で「日本軍は悪くない」と主張する高市早苗を筆頭とする歴史修正主義者の心理と、コインの表と裏の関係にあるという事実だ。要するに、現象面では異なるようにみえても、本質において同一性がある。結論するに、自分の責任ととらえられない惰弱な精神性のたまものなのだ。外国人排斥の心情と歴史否定論者はたいがい重なり合っている。私の見るところ、この仮説は間違っていない。
|
|
2025/11/5 8:24
|
赤旗砲に右往左往する高市首相の生命維持装置
思えば「安倍派解散」の引き金となったのはしんぶん赤旗日曜版の2~3人の取材班による調査報道だった。今回は高市政権のアキレス腱ともいえる維新の共同代表を狙い撃ちした形だ。藤田共同代表の第一秘書が代表をつとめる会社に藤田事務所の仕事を発注し、第一秘書はその会社から700万円以上の報酬を受け取っていた。藤田氏は兼業の届け出もしており、きちんと収支報告書にも記載している、合法だと開き直るが、維新創業者の橋下徹氏から「外形的公正性からアウト」と指摘される始末。維新の天敵ともいえる日本共産党から狙い撃ちされて悔しかったのか、藤田氏は赤旗記者の個人情報(名刺)をネット公開する威圧手段に出たから、赤旗編集部も黙っていなかった。本日付同紙によると、小木曽編集局長と山本日曜版編集長が連名で藤田代表に画像削除と取材を申し入れる事態に発展し、もはや全面対決の様相だ。プライドがある藤田共同代表は謝罪しないものとみられ、赤旗側は「11月10日まで」に「公開された名刺の削除、謝罪などがない場合には、法的な検討に入る」と相手側に通告した。高市政権の足元は、早くも代表質問の1日目にして崩れつつあるようだ。
|
|
2025/11/4 7:21
|
反知性主義者が首相になるとき
安倍元首相は南京事件否定論者だった。さらに自身は首相在任中に、慰安婦問題で日本は悪くなかったという史実改変に躍起となった。かつての旧日本軍は当時の法制上、「天皇の軍隊」であり、日本軍の否定は天皇の否定につながると短絡的に考えていたからだろう。彼らは、旧日本軍の加害責任をなかったものに改変することに政治生命を賭けていた。一般にこうした行為は「歴史修正主義」と言われることが多いが、この言葉はおよそ微温的で、実態に則しておらず、率直に「歴史否定」と指摘するほうが的確だ。こうした歴史観をそのまま受け継ぐ女性首相がこのほど誕生した。
村山談話が認めた侵略を伴なう戦争責任を否定する人物として知られてきた。南京事件がなかったと思い込みたい櫻井よしこの政治家版と考えれば間違いなかろう。もともとの歴史観が史実と異なっている人間というのは、人間生命の骨格が捻じ曲がった精神の奇形に等しく、まともな状態とはいえない。創価学会の第2代戸田会長は常々、史観の重要性を訴えたが、事実に立脚した歴史観をもつことの必要性を指摘した言葉だった。国のリーダーの背骨が曲がれば、当然、国の形も正常ではない方向でねじ曲がる。安倍政治がこの国をどれほどダメにしたかは、ヘイトスピーチが蔓延する社会状況や外国人を排斥する参政党などの伸長ぶりを見れば明らかだ。この国が再び同じ愚を犯す必要はないと考えている。
|