コラム日記 - 記事一覧
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発行日時 |
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2025/3/16 7:40
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見返りを求めるカネ
現状では商品券騒動がどこまで拡大し持続するかはわからないが、本日付在京紙でこの問題を1面トップで批判的に取り上げたのは「首相批判 地方から続出」と掲載した読売だけである。首相自身が真摯に反省と謝罪の気持ちを表明していることに加え、むしろ首相を引きずり降ろそうとする安倍派議員という構図がSNS上では広がっており、10万円の商品券よりも4ケタの裏金を公然と生み出してきた安倍派議員たちへの批判のほうが強くなっているように見えるからだ。気のせいか、テレビで見る石破首相の表情はサバサバしているように思える。現実には首相の進退は本日付紙面のどこかに出ていたが、今後の自民党参院幹部の意向が強く働くというのは事実だろう。とはいえ、政権発足から1年もたたないで一つの政権を終わらせることはすべての政策を宙ぶらりん化させ、他国首脳間との交渉もいったんは振出しに戻るという意味でも、国家行政としてみれば日本にとって大きな損失となることは間違いない。10万円の商品券を慣例に従って首相が配ろうとした問題(未遂事件)は、大企業が特定の思惑をもって政権与党の中心に大規模献金を繰り返す行為と表裏一体の関係にある。要するに、一定金額の拠出行為によって、何らかの見返り効果を期待するという点では異なるものではないからだ。経団連や大企業が自民党に大規模献金を繰り返すことによって、「法人税」が減税されつづけてきた政治意思との関係は無関係と思えない。政治を歪める制度や仕組みを健全化することが現在の政治に求められている。本質を踏み外さないわかりやすい議論が必要だ。
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2025/3/15 6:33
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官房機密費は裏金か
首相官邸周辺を多少なりとも取材した経験のある記者なら、官房機密費がどのように使われてきたかは知っている。年間10億円以上の税金を官房長官が管理し、政権党の政策推進のために利用される。この支出は領収証を必要としない特別のお金であるのが大きな特徴だ。今回の1年生議員への飲食費、お土産代は総額で200万円近くにのぼるが、それが首相個人の「ポケットマネー」から支出されたと本気で思っている記者は少ないだろう。いくら資金潤沢な政治家といえども、目的の明確でないこうした支出に3ケタの規模で軽々しく個人の懐を痛めて支払う政治家はいないというのが普通の見方と思えるからだ。仮にこの見立てが正しければ、問題の本質はいまの新聞紙面とは大きくずれてくる。現状では石破首相の「個人」の問題とみなされているが、実際は政権党として長年この国を率いてきた自民党内の「慣習」の問題ということになるからだ。そうなればもはやその内容が有権者目線からは受け入れられないというのがいまの政治状況ということになるのだろう。残念ながらその部分に斬り込んだ新聞は、本日付在京6紙の中にはどこにもなかった。この国に真のジャーナリズムが存在しない証左といえるかもしれない。国民目線での再発防止を求めるには、何よりも真実が必要だ。記者はそのために存在することを、「月給」で仕事をしている記者たちは思い知るべきだ。
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2025/3/14 8:38
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高度な政治判断を問われる首相職
この間の石破政権の方針を見ていて、気になる点が3つある。一つは少数与党がどの野党を取り込むかという優先判断において、石破首相がこの通常国会では維新を第1優先とした方針だ。昨年の臨時国会における補正予算審議では、国民民主を第1優先とし、同党の賛成を得た上で、結果的には維新も追随した形だった。一方この通常国会では維新を第1優先とした結果、国民民主を離反させる結果につながった。維新案の高校無償化は、私立無償化が公立高校の地盤低下を招く「副作用」も含めて有権者に理解されにくい。第2は高額療養費の本人負担引き上げ問題について、首相の判断が二転三転した問題だ。大まかには厚労・財務両省役人の誤った報告を鵜呑みにした結果とされているが、ここでは有権者本位の、夏の参院選を見越した大局的判断を問われる場面だった。3番目は昨晩の商品券報道だ。首相にとっては商品券を配ることは「初めてではなかった」とのことであり、政治上の恩師である田中角栄流の気配りと思えなくもないが、マスコミの恰好の餌食として作用したことは事実だ。今後もトップの判断は常に問われつづける。いずれも政局の有力な総合プロデューサー的存在が政権内部さらには首相側近にも存在しない状況が浮かび上がる。一方で国の防災対策は待ったなしの状況で、現在さまざまな施策が進んでいる。国家の将来のため、石破首相は踏ん張るべき時だ。
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2025/3/13 9:32
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コップの中の政争
一般紙を読まない人はほとんど気づかないだろうが、「週刊現代」の最新号で「4・4石破退陣 コバホーク新総裁で衆参ダブル選へ」と決め打ちしたタイトルの記事があったので気になって手に取ってみた。政界の常識として、辞任する気がない首相を引きづり降ろそうと画策することは容易ではない。昨日も京都選出の自民党参議院議員が自身の選挙の行方が気になるのか、夏の参院選をこのままでは戦えないと公然と主張し、本日付産経では今も安倍晋三元首相に忠誠を尽くす阿比留記者がその行為を宣揚するコラムを掲載していた。話を戻すと、上記「現代」記事ではエビデンスは無きに等しく、4月4日という具体的な日程も、過去の森元首相が退陣したタイミングが4月第1週の金曜日だったことに合わせて勝手に作出したものにすぎない。要するに見出しで引っかけて少しでも雑誌を買わせようとする“禁じ手”の一種にほかならない。ふつうに考えて「少数与党」となっている内閣で、だれが首相になろうと大した差は生じない。むしろすぐに代えることのほうが行政能力の蓄積を徒に無駄にし、日本の国益を損なうと考えるのが普通の思考方法だろう。次の参院選で与党が過半数を割る事態となれば辞任は免れないだろうが、それ以前から足の引っ張り合いをする姿は見苦しく映る。
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2025/3/12 9:19
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防災立国がもたらす果実
東日本大震災から14年となった昨日、福島県主催の追悼式で石破首相は日本を「世界一の防災大国にする」(本日付産経)と力強く語ったようだ。あいさつ文全文を掲載した新聞によると、次のようになっている。「東日本大震災における経験を、能登半島地震や大規模火災をはじめとする自然災害への対応、事前防災の徹底や災害対処体制の強化、避難所における生活環境の改善などの取り組みに生かし、防災庁を新たに設置し、世界一の防災大国にすべく力を尽くしてまいります」(本日付東京)。このコラムで何度か主張しているように、世界の異常気象の蔓延と日本の置かれた現状から考えて、政治の大きな仕事が「防災力の強化」および「国土強靭化」にあることは明らかだ。その結果は、災害にあったときに地元住民から「石破政権はよくやってくれた」との後世につづく評価をもたらすことは容易に推察できる。一方でやるやる詐欺とも酷評された安倍元首相の「憲法改正」に関する空中戦のような公約からすると、防災力強化はよほど「実(じつ)」を伴う生活者目線の政策そのものだ。石破内閣は日本のため、防災庁設置を安定軌道に乗せるまでは最低限存続する義務があると私は考えている。
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2025/3/11 10:33
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「捕食者」に乗っ取られた世界
本日付日経の長文コラムで秋田浩之コメンテーターが米政権の内情について詳しく分析していた。それによると政権上層部には現在4つの勢力が生まれており、そのいずれもが「トランプ氏に強く影響を及ぼせるような派閥は存在しない」状態で、宇宙に例えると、トランプという「太陽」の周りを、星雲状態の「惑星」が回っているようなものと表現している。このコラムで目を引いたのはトランプ外交を「捕食外交」と表現している点だ。「捕食」という言葉は、良心の呵責をもたない異常人格者(サイコパス)を語る際の一体不可分の関係にあるワードとして注目される。同コメンテーターにその意図があるかどうかは知らないが、このコラムで何度か指摘してきたように、トランプ大統領ほどサイコパス類型に100%当てはまる特異人格は珍しい。良心の呵責なく、好き勝手に振る舞い、周辺の人間や関わる人々のすべてを操作する。その結果、必然的に「捕食」する行動を繰り返す。サイコパスには犯罪者となって塀の中に落ちる者も数多いが、狡賢いサイコパス(ホワイトカラー・サイコパスともいわれる)は法律の目を自在にかいくぐり、生涯塀の中に落ちることなく、逆に社会的に成功しているケースもまま見られる。いずれにせよ、その本質的特徴は「良心の呵責をもたない人格」にあり、周辺の多くの人間がそれらの行動に巻き込まれ、有形無形の大損害を被る。その結果、サイコパスは「捕食者」の異名を持つ。いま現状の世界は、民主主義が捕食者によって乗っ取られた状態と捉えるのが、心ある犯罪心理学専門家の見方であろうと感じてやまない。
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2025/3/10 7:06
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権力欲に溺れたケース
首相の通算在職日数で「憲政史上最長保持者」を記録した安倍元首相。同首相が2017年以降に残した政治的遺物を振り返る時、権力者は引き際が大事であることをつくづく思い知らされる。過度な権力欲をもつ人間でなく、2017年に首相を辞任していれば、いまよりも歴史的に評価されたことは明らかだったと私は確信する。なぜなら2017年から始まった森友・加計学園問題での国会虚偽答弁は139回、さらに2019年からの桜を見る会を巡る国会での虚偽答弁は118回、“希代のデマ答弁男”の名を歴史に刻むことになったからだ。さらに最後は行政府の長が司法権の一極を乗っ取ろうと謀った「検察庁法改正案」を企画し、意図を察した市民らによって潰された。安倍元首相が辞任表明する3カ月前の出来事である。つまるところ2017年以降の3年前後は、同政権はメタメタだった。政治的功績も、正と見るか負と見るかで見解は分かれるが、大きな遺産は2019年の消費税10%上げくらいなもので、本人が最も成し遂げたかった憲法改正などは手つかずのままの辞任を余儀なくされた。加えて2017年のうちに辞職していれば、翌年の大阪財務局職員の自死も起きなかった。これらは一人の人間の「過度な」権力欲が引き起こした出来事にほかならない。
話は変わるが、昨日の自民党大会で石破首相は夏の選挙に向けて雄叫びをあげた。これまであまり権力者の感じがしなかった首相が、ようやく権力者の顔を見せ始めた。首相はそうでなくては務まらない。あとはその権力をどう使いこなすかだろうが、このコラムで何度かふれているように、「防災立国」政策の着実な推進を念願する。過去の虚言にまみれた安倍政治(歴史認識を含む)を一掃し、新たな日本の時代を切り開く架け橋となられることを念願する。
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2025/3/9 10:10
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男社会の弊害
「男社会の弊害は、強者の論理に陥ること」。このフレーズがいきなり目の中に飛び込んできたのは本日付東京新聞(こちら特報部)だ。旧ジャニーズ性加害問題で、加害側企業が一向に対応をしようとしていない状況を「強者の論理」の表現で示したものだ。一方で同じ本日付東京新聞には国連の中満泉・事務次長のインタビューが掲載され、自身の職場について次のように語っている。「私の職場は、男女がほぼ半々。育休に男女の区別はありませんし、男性も子どもの迎えのために、よく早めに帰ります。自然と組織文化が変わり、仕事以外の活動もしやすいなど、全ての人が働きやすい環境になっていると実感しています」。やはり国連はすべての組織がそうなのかどうかは知らないが、男女平等が徹底しているようだ。一方の日本はいまだ完全な「男社会」だ。明治時代のなごりを濃厚に残している証左だが、政治にしろ、ジャーナリズムにしろ、多くが「男社会」のままだ。冒頭にあるように、男社会の特徴は「強者の論理に陥ること」にあるので、少数者への配慮や人権の保持が難しくなる。日本の男社会文化の象徴はやはり国会だろう。わずか10%台の女性占有率しかない。だが公明党にも変化が生じ始めている。国会議員の女性比率を30%に上げることを言明したのは石井啓一前代表だったと思うが、6月の都議会選挙でも同党は女性候補者を“倍増”させる。明治以来150年以上つづく男社会が急に男女平等に変わるわけではなかろうが、小さな一歩が大きな一歩の始まりとなることは間違いない。東京公明党、ならびに支援団体の東京創価学会に期待する。
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2025/3/8 10:19
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参院選の悪夢
18年前の悪夢の参院選挙が脳裏をよぎった与党議員もいたにちがいない。2007年、第1次安倍政権で行われた最初で最後の国政選挙(参院選)で自公は歴史的大敗を喫し、参議院で自公は過半数に17議席足りない「ねじれ状態」を生み出した。つまり、後の政権交代の流れを決定づけた選挙のことである。このとき問題となったのは「年金未納問題」であり、今回は高額療養費の引き上げ問題だ。報道を見る限り、石破首相には厚労省幹部から「患者団体は引き上げの凍結を求めていない」(日経)といった誤った報告が入れられており、さらに「開始時期まで白紙になれば、『制度を維持するための見直し自体が今後できなくなる』(政権幹部)との懸念が背景にあった」(毎日)ため、「財務省と厚労省幹部が譲歩しないよう首相に念を押した」(同)背景もあったようだ。さらに公明党には「立民も納得していると財務省や厚生労働省に聞いていたのに話が違う」(東京)と後で不満を露わにした幹部もいたようだから、これ以上の予算再修正をしたくない財務省と、医療制度改革に余計な波風を立てたくない厚労省による与党幹部らへの説得があったことは明らかだ。だが世論は違った。徐々にこの問題が拡大し、無視できないレベルになると、政治判断のタイミングが、衆院通過の時期と重なったことが仇となった。背景には石破首相の優柔不断があったことも事実だろうが、政治家としての“先を見通す力”が与党に問われた局面だったと映る。もともと首相自身も昨年末の時点からこの問題で「不安を抱えていた」(東京)との論評もあり、役所の主張に反する形で危機感を抱く政治家がいて、未然に防ぐ行動があってもおかしくなかったからだ。その可能性があったのは厚労省を担当する与党政治家、両党幹部らということになる。こればかりは政策能力だけでなく、政局勘を求められる問題にほかならない。高額療養費の問題についてはこのコラムでは真剣に批判してこなかった。石破内閣を支えたい立場としては、お詫び申し上げる。
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2025/3/7 8:28
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安倍政治の驕り
大阪財務局職員、赤木俊夫さんが亡くなって7年となる朝だ。2018年3月7日のことだった。第2次安倍政権は2016年をピークに、2017年から“下り坂”に入る。森友・加計学園問題がすっぱ抜かれのがこの年で、安倍首相は2月17日の国会答弁でもし自分や妻が関わっていたら「総理も議員も辞める」とタンカを切って、職員自死の遠因をつくった。森友・加計問題で窮地に追いやられた首相は同年9月、衆院解散して問題払拭を画策した。選挙では小池百合子旋風を危ういところで跳ね返し、勝利したが、問題は収まらなかった。翌年、財務省の公文書改ざんが発覚したからだ。もし安倍首相が2017年2月段階で首相を辞任していたら、職員の自死には結びつかなかったと思われる。「安倍一強」という究極の国家権力に忖度した役人たちが、自らの本分を忘れ、保身に走って文書改さんを部下に命じた事件。大阪地検特捜部は2018年5月、文書改ざんに関わった38人全員を不起訴にした。安倍首相はこの間、2017年から18年にかけて国会で139回の虚偽答弁を行ったとされる。すべてが「安倍一強」に忖度する状況だった。2020年、安倍政権は検察庁法改正を企て、自らに忖度する人物を検察のトップである検事総長に異例の形で引き上げようとした。だがこの邪悪な企みは、日本社会の民衆の抵抗で潰されるに至る。第2次安倍政権の後半は、ほとんどが汚濁まみれの歴史だ。石破内閣はこんな政治を二度と繰り返してはならない。
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