コラム日記 - 記事一覧
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2025/6/16 9:25
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「不法滞在者ゼロプラン」のお粗末
東京都議選へ最後の1週間に入った。昨年10月の総選挙以降、国民民主党に吹いていた風はほぼやみ、その分新たな極右小政党の参政党に流れているようだ。最近は中国などを過度に敵視し排除する姿勢を鮮明にする排外主義的な主張が得票しやすい社会構造となっており、埼玉県でもクルド人問題が脚光を浴びるのは選挙で票を得られることが背景にある。ただしこれは一時的な風潮にすぎず、本来の日本政治のあるべき姿でないことは明白だ。選挙目当ての目的が大きいのだろうが、政府も法務省を筆頭に「不法滞在者ゼロプラン」などと銘打ち、行政自ら人種差別を助長するような広報を始めている体たらくだ。外国人の前に「不法」や「違法」の冠詞を付けること自体、1974年の国連総会で「止めましょう」と決めたと主張するのは師岡康子弁護士だ。行政自らこのような行為をしてしまう背景には、日本ではどのような行為が人種差別につながり、何を行なったらいけないかとの「基準」が法律で規定されていないことがある。外国人全体がまるで犯罪者であるかのような広報宣伝を行い、最終的に不利益を被るのは日本社会そのものだ。そのことに気づいていない日本人が多い。
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2025/6/15 12:16
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長嶋茂雄の思い出
最近仕事に没頭しているとこのコラムを書き忘れることがある。齢だ、と思うことにしたい。私の名前は長嶋茂雄から取ったと親に聞かされたことがあった。ただし画数がそのままではうまくなかったので一字だけ変えたのだとも言っていた。ともあれ私個人はあまり野球に関心がない大人である。そのため名前の元となった方が亡くなったと聞いた時もさして大きな感慨が起きなかったのだが、先日、同氏の若いころの練習方法をある番組で見て、関心を持った。バットを握って素振りをする際、部屋を真っ暗にして、スイングが発する音だけを聞いて好調・不調を聞き分けるという独特の練習方法についてである。これは武術に通じる稽古法とも思えたので強い関心を抱いたというわけだった。沖縄発祥の本来の空手は集団稽古ではなく一人稽古が主流で、その意味で長嶋氏の一人稽古と共通するものがある。さらにこの「孤独」に耐えられるかどうかがポイントというようなことを番組内で長嶋氏は話していた。空手の世界でも、派手な組手稽古をつづけて強くなるという発想は本来の空手には存在しない。なぜなら再現性がないからだ。そのためあくまで自身という内面と向き合う稽古でなければ向上しないという考え方がある。一流の人物はやはり競技を超えて共通するものがあると一人腑に落ちた。
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2025/6/14 4:27
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市田副委員長の薄氷の勝利について
東京都議会議員選挙の告示日となった6月13日、東京地裁712法廷で関係者が注目する判決が言い渡された。日本共産党を2023年2月に除名された松竹伸幸氏が、同党の市田忠義副委員長が地元京都府の演説会で講演した内容について名誉毀損として165万円の損害賠償を求めていた裁判である。結論として一審では請求棄却された。除名処分から2週間後に行われた講演で市田氏は松竹氏が記者会見で語った言葉として「党内をかく乱するためには値段も安くしましょう」と版元の文藝春秋と相談していたと紹介した。フレーズ前段の「党内をかく乱するために」が今回裁判の争点となった。記者会見では実際には「党内をかく乱するために」と松竹氏は述べていなかったからだ。松竹氏側の代理人で名誉毀損問題のエキスパートである佃克彦弁護士は判決後、「絶対勝てると思って起こした裁判」と私の取材に振り返った。審理の過程で市田氏側は「被告の発言が事実の摘示なのか意見・論評なのかについては、審理の中で裁判官の意見を伺いたいと考えています。仮に事実の摘示ということであれば、さらに反論することもあり得ると考えています」と要請したのに対し、裁判所は2月28日の非公開の期日で「裁判所としては、意見・論評と考えている」と回答、調書にも記録として残していた。名誉毀損は対象となる争点が事実摘示か意見・論評かで結果が大きく変化する。前者であれば厳密な違法阻却要件(真実性・公共性・公益性)が求められるのに対し、後者の場合は人格攻撃などと認められなければ名誉毀損とはならないからだ。裁判所が後者と考える旨を述べた事実は、この裁判における原告勝訴の可能性がぐっと低くなったことを意味していた。逆に事実摘示ということであれば、市田氏側が確実に敗訴する事案だった。
判決当日、傍聴席には4人。松竹氏の支援者らしい女性が最後に入ってきたほか、党職員と思われる壮年男性1人がいた。弁護士は松竹氏側の佃弁護士が原告席に座り、被告の市田副委員長側は代理人が5人ほどついているがだれも出席していない。つまり市田氏側は「全員欠席」の状態だった。仮にこの裁判で被告勝利を確信していたのなら、「欠席」ではなかっただろう。その事実がこの裁判の状況を浮き彫りにしていた。現に私が判決を聞いて5分後に裁判所の正面出口の門扉を出たところで、本訴主任の加藤健次弁護士が入って来るのとすれちがった。判決文を取りに時間差で裁判所を訪れたのだろうと私は推測した。いずれにせよこの司法判断が高裁でも継続されるかどうかは、高裁裁判官の巡り合わせによって変化するであろう微妙な案件だ。とりあえず一審判決においては市田氏は〝薄氷の勝利〟を得た。だがこの裁判はもともと本訴(除名無効を求める裁判)とは法的には何の関わりもない裁判であり、本訴のゆくえこそが志位・市田の両最高幹部が主導した一連の「除名」劇の結論であることは強調しておかなければならない。本日付のしんぶん赤旗は社会面で控えめに報道した。
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2025/6/12 5:55
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お手軽右翼の流行
安倍政治の受け皿となってきた保守・極右層の票が拡散する。一時は国民民主党に流れそうな勢いもあったがここに来て一転。自民を離れた行き先はもはや日本保守党か参政党しかないようだ。いずれも極小政党であることに変わりはないが、日本保守党は保守論壇を称する月刊『Hanada』や月刊『WiLL』と絶縁状態になっており、最初の国政候補者である飯山陽氏と訴訟合戦を繰り広げている始末だ。山尾しおり氏を候補者に誘いながら自ら斬って捨てた国民民主党に対し、「仲間を大事にしない政党が国民を大事にできるわけがない」とのつぶやきも広まるが、同じことは日本保守党にもいえる。最初の国政候補者との間でバトルを広げているような政党に、未来などあるわけもない。一方、残るは参政党だが、この政党の政治理念もかなりお粗末だ。「ジャパン・ファースト」は聞こえだけはいいものの、排外主義の政策化にすぎない。候補者を見ていても、そこに深みは感じられない。旧統一教会の支援が入っているとの話もあるが、それはそれで頷ける。結論するに「穏健保守」はいまの石破自民党に残ると思われるが、安倍政権下で増殖した「限界保守」の行き場は決まらず、彷徨いつづける。
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2025/6/11 8:42
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共産党はなぜウソが平気なのか
都議会議員選挙などでいつも顕在化するのは公・共対決の熾烈化だ。同じような支持基盤を土壌に60年代ごろから対立が明確となり、選挙のたびにぶつかってきたライバル同士の関係だ。今回の都議選では小池百合子都知事が打ち出した水道代の基本料金を夏場の4カ月間だけ無償化する措置について、公明党は「自分たちの要望が通った」と宣伝し、一方の日本共産党は「2020年から繰り返し求めてきたもの」(6月8日付しんぶん赤旗)など、まるで自分たちの努力で政策実現したかのような宣伝を公然と繰り広げている。客観的に見た場合、どうなるか。よくいわれることは、共産党は総花的に多くの要望を提出するなどするものの、多くは相手にされない。その上で与党が必要と感じて提案して実現した内容がそれとかぶる場合、共産党は自分たちの要望が通ったという論理を「使用」する。かといって、その政策実現のための予算案採決においては賛成せず「反対」する。それでいて選挙の際に「政策実現した!」と声高に叫ぶのはいつもながらの光景だ。
いうまでもなく、一つの政策の実現には、役所側との折衝に始まり、議会内の調整など多くの「下作業」が必要になる。実際にその作業のために汗をかくのは常に公明党側だ。そのため、共産党の虚偽とも思える宣伝に最も腹を立てるのも公明党側という図式が常に見られ、まさに今回も同様の構図だ。公明党支持者からすると、なぜ共産党はウソを平気でつけるのかという素朴な疑問に結びつくが、共産党側からすれば、たいした実績も出せない政治ポジションにいる以上、宣伝材料はなんでも活用させていただくというのが本音かもしれない。なおかつ本来の革命政党の立場からすれば、革命成就のためには多少のウソなどどうでもよい、人民を騙してでも革命を達成することが第一目的という歴史的な精神性があることも明らかだ。要するに、目的のためには手段など大した問題ではないという発想である。だが他国共産党を見てみよう。多くの革命を達成した国で、その後まともに国家として繁栄した例がどの程度あるだろうか。ほとんどが独裁化、腐敗化した政権のもとで崩壊し、成功した例を私は知らない。第三者の立場からすると、日本共産党の政治姿勢は完全な二重基準だ。政治における精神性の根幹は、いかに有権者を欺くか。要するに勝てば官軍という根強い発想である。
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2025/6/10 9:01
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二重基準の政党
日本共産党の長所と短所を一つずつ書けという問題が出たとしたら、私はこのテーマで書くだろう。私から見た同党の長所は、旧日本軍の罪責について矮小化したい勢力(一般には右派、靖國勢力、歴史修正主義者ともいう)に事実に基づいてきちんと反論・検証を行ってきたことだ。公明党が与党に入ってからこの種のフィールドでの同党の活動が急速に弱まったのに対し、日本共産党は従来の社会的役割を維持し、橋頭保を守ってきたと私個人は評価する。一方、日本共産党の短所は、そのこととコインの裏表の関係になるが、自分の党の歴史については真実の記述を避け、歴史修正主義の張本人となってきた事実だ。一例を挙げれば、最近では「民主集中制は外国(コミンテルン)由来ではない」とか、「51年綱領は正規の綱領ではなかった」などの同党の主張がその典型例だ。同時代の間は党内外で常識とされたことが、時代をへると覚えている人は少ないから平気だとでも思うのだろうか、平気で歴史の改竄を行ってきた。その意味では完全なる「二重基準」を体現する政党が日本共産党というのが私の認識だ。要するにこれらの政治姿勢は「正直」や「誠実」という価値観からはかけ離れており、仮に同党が政権に入れば、このような悪い体質が“全面展開”されることが容易に予測される。要するに属人主義がはびこり、公平性のない社会が形成・促進されることが明らかだ。その意味で私は、日本が戦後、共産主義化されなくて本当に助かった、同党らの革命が成就しないで本当によかったとの安堵の感慨を抱く一人である。
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2025/6/9 8:33
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党最高幹部が全員パワハラ加害者の政党
日本共産党を30年近く見てきた取材者の感想として述べると、近年の同党の凋落ぶりの要因は自らの過ちを認めることのできない拭いがたい体質にあるとしかいいようがない。人間におきかえれば、自分の過去の行動について真摯に周りにも耳を傾け自省するということと同じことだろうが、その点の欠落に大きな問題を抱えている。パワハラという観点でいえば、小池晃書記局長は副委員長時代の田村智子氏に公衆の面前でパワハラ発言を行ったことで軽い処分を受けたことがある。小池氏も、あるいは被害者と認定された田村氏本人も、パワハラの被害者という意識はなかったようだが…。田村委員長の行った問題発言は2024年1月の党大会で神奈川県の代議員に対する糾弾演説が、パワハラそのものだと指摘されてきた。こちらは何ら反省することなく、うやむやにしたままだ。これで党内のハラスメント根絶を訴えたところで、社長自らパワハラを公然と行い開き直っているような状態だから、社員にその訴えが浸透することも難しいと思われる。党内の最高権力を握る志位和夫議長は、23年2月の松竹伸幸氏除名に始まり、多くの除名・除籍の最終責任者だ。松竹伸幸氏や神谷貴行氏と同党との裁判はいずれ明確に決着がつくので、政党側が負けた場合は、明らかに志位議長の責任となる。同党の除名・除籍は党員の長年の献身的な党活動を全面否定するようなもので、部外者の目からみれば中世の魔女狩りに近い。その意味で、究極のパワハラにも見える。党の表の顔となる日本共産党の3トップがいずれもハラスメントの「加害者」であり、特に2トップの志位議長と田村委員長は自らのパワハラをいまだなんら悪びれることもなく、多くの関係者から疑問視されている。その結果、こうした体質は上から下まで通底していると見るべきだろう。三重県の若い女性市議が5月末日に突然同党を離党した顛末がSNS上で話題になっているが、最高幹部が「模範」を示さない以上、党内からハラスメントの問題が無くなる事態も永遠に訪れることはないと思う。
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2025/6/8 9:37
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外国人と人権
私がフリーランスとして独立したのは1997年、32歳の年だった。先日、物書きには最低でも3本の専門取材分野が必要と書いたが、当時の3本のうちの重要な1本は「外国人問題」だった。これは社会新報時代からの流れで、その知見はそのころ公明党の冬柴幹事長が提唱していた永住外国人地方参政権に結びつき、創価学会の青年向け機関紙でペンネームだったが長い期間連載させていただき、当時の学生部を中心とする運動につながった経緯がある(法案は未成立のまま。今では世論の排外主義的傾向に押されてか、公明党の政策として公然と掲げられることもなくなった現状がある)。その後、教団の攻防戦がらみの取材が増え、本来の取材テーマは先細りする一方で、現在では関心を抱いているものの すでに仕事としては 消滅してしまっている分野だった。ただし「右派」の動向は取材上の関心領域ではあるので、排外主義という観点からの外国人問題はフィールドに入っている。埼玉県の川口・蕨のクルド人のトピックには関心がありつつも、「手が回らない」というのが実情だったが、そんなことも言っていられなくなった。近いうちに取材に着手したいと考えている。
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2025/6/7 8:52
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戦前の仕組みに戻せと主張する自衛隊幹部
本日付毎日コラムで伊藤智永記者が火箱芳文元陸幕長が「靖國神社を国家の慰霊顕彰施設に復活し、一命を捧げた自衛官をまつるようにすべきだ」と主張している事実を紹介し、「考えとして間違っている」と一刀両断している。陸幕長経験者の中にも火箱氏の主張に批判的な意見をもつ人がいることも紹介している。これは先の昭和の戦争と現在をどう立て分けるかという歴史的経緯を伴う問題だが、自衛隊幹部の中に旧軍との一体性を心情にもつ傾向があることは確かだ。現に防衛大の学生らはいまも靖國神社に集団参拝するし、自衛隊幹部らも同様だ。私には戦後処理の不十分さが招いた結果としか思われない。石破首相は戦前に復帰しかねないこうした動きを踏まえ、戦後80年における首相または石破内閣の未来志向の考えと決意を表明すべきと考える。
土記:自衛官戦死者の靖国合祀=伊藤智永
| 毎日新聞
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2025/6/6 13:05
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「だれも望まない同日選」の可能性
本日付産経などによると、2日前に報道された公明党の参院選公約の原案から、さらに変更が加えられることが報じられている。2日前は食料品などの軽減税率を8%から5%に恒久減税をめざすとしていた原案を正式発表では取り消す構えだ。自民党公約との整合性に配慮したということだが、背景には内閣不信任案の提出が現実味を帯びていることがある。もし提出された場合、石破首相は解散を匂わせており、出されれば衆院解散が確実な情勢だからだ。その場合、明確に政権選択選挙となり、自公の重要政策の食い違いは致命傷になりかねない。あとは立憲民主の野田代表が不信任案の提出を決断できるかどうかにかかる。与野党の駆け引きの焦点となっている選択的夫婦別姓の実質審議は10日の参考人質疑で一通り終了する予定で、あとはいつ委員会採決に至ってもおかしくない。一方、11日夕方には党首討論が設定された。この日の石破・野田対決などにおいておおよその方向性が出るものと見られている。もともと石破首相は現在の「少数与党」をこのままズルズルと続けられるとは思っておらず、これを機会に衆院でも過半数を復活させたいと願っていることは間違いない。
【独自】公明、公約での消費減税見送り 参院選へ自民との不一致回避(共同通信)
– Yahoo!ニュース
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