コラム日記 - 記事一覧
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2024/4/24 9:26
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公明党の世代考
本日付東京新聞のコラム「視点 私はこう見る」は同紙の政治部記者が戦闘機輸出解禁について「将来に禍根」の見出しで書いていた。その記事によると「防衛省を担当して2年半になるが、紙面で安保政策の『大転換』と何度書いたかわからない」という。さらに後半は公明党に関する記述がつづく。過去の三木首相時代に「武器輸出3原則」の国会答弁を引き出したのは「当時野党の公明党の正木良明氏」であった事実を紹介、それと対比する形で、半世紀後の「政権与党になった公明は解禁に賛成した」と記す。公明党の過去の主張と現在の行動に大きな落差があると指摘したいようだ。確かに昭和の悲惨な戦争を体験した世代と、いまの戦争を直接知らない同党国会議員団の世代は明らかに異なる。ましてこの種の問題は専門性が高く、男性集団の考えで誘導されている側面も強い(公明党国会議員団の女性比率はわずか13%で、この問題に女性議員は直接関わっていない)。必要なのは過去から現在につづく歴史の「タテ軸」と、現在の世界全体という「ヨコ軸」を正確にとらえつつ、日本が世界で果たすべき役割を政策に落とし込む「卓越した技術」ということになるのだろう。「抑止力が必要」というばかりの安倍政治の延長レベルの話で物事を動かすことは、単なる追従型政治にすぎない。どのような未来社会を目指すのか、政党としての構想力を問われている。
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2024/4/23 8:59
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デマとともに生きる
SNS上ではデマは真実より速くかつ広く拡散する。これは業界においては統計に基づく一つの法則となっている。地味な真実より、奇抜なデマのほうが興味深く感じられ、拡散されやすいという人間心理を反映した現象といえるだろう。そのため多くの陰謀論や大規模デマを使えば使うほど、フォロワー数が増えるという浅はかな社会現象が生じる。この法則を巧みに「活用」してこれまでフォロワー数を伸ばしてきたのが百田尚樹・有本香・門田隆将といった連携をとりながら50~60万人のフォロワーを獲得してきた3人組だ。この数字は一般の雑誌部数を凌駕するもので、その結果、彼らの一時的な存在価値を高める作用をうんでいる。つまり、真実の発信で認められて顧客を得ている“正当な現象”ではなく、むしろ面白おかしくデマを刷り込んで拡散しながら人を引きつけている「人寄せパンダ」ともいえる現象だからだ。ただしそれは現代のSNS時代の顕著な現象というべきものであり、このような状況がしばらくは続くのだろう。いえることは、ネット民のリテラシー(情報精査能力)が高まれば、このようなまがい者は早晩「淘汰」されるだろうということだ。3人のうちの1人のデマ拡散の輩の前歴は、デマ記者だ。デマがはびこる社会はまともではない。浅はかな社会現象である。
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2024/4/22 8:49
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自己愛性の戦争呼称
本日付朝日新聞で識者の成田龍一氏が次のように語っていた。「『大東亜戦争』という言葉を使うことは、戦争の反省の上に成り立つ戦後社会を認めたくないという一つの立場表明、イデオロギーとなっています」。さらに多くの戦争で戦後60年ほどで呼称が定まっていくのが普通であるのに対し、日本の昭和の戦争の場合、負けた負い目も伴って「日本自ら総括できなかった」ため、今も議論が収束しないと見ている。来年で戦後80年を迎えるが、この問題はきちんと確立する必要がある。一方で、本日付産経社説はわざわざ「先の大戦(大東亜戦争)」と肩ひじ張った紙面を掲載している。これも「戦争の反省の上に成り立つ戦後社会を認めたくないという一つの立場表明」であることは明らかだ。産経は旧日本軍が犯した南京大虐殺の史実についてさえ、日本会議などの史実に基づかない主張に流され、「なかった」と主張する日本で唯一の全国紙として知られる(右派系とされる読売はそんなお粗末な行動を取らない)。ロシアのプーチン大統領(=ICC指名手配中の戦争犯罪容疑者)がウクライナ侵略戦争を「特別軍事作戦」と都合よく呼称しているのと、産経新聞の行動は変わるところがない。
「大東亜戦争」呼称から見えるもの 戦時中から複数解釈、歴史認識の対立も 陸自連隊の投稿で注目:朝日新聞デジタル
(asahi.com)
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2024/4/21 9:27
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自称保守の商売団体「日本保守党」
衆議院3補選の投開票が1週間後に迫り、本日がラストサンデーとなる。岸田政権の命運を左右する可能性のある選挙だが、自民党が唯一候補者を擁立した島根1区が焦点となる。さらに東京15区の候補者乱立様相が世の注目を集める。ネット上では日本保守党を応援する言説や否定コメントなど活況を呈す。日本保守党の党首は作家の百田尚樹、事務総長は有本香、これを側面支援するのが門田隆将と、4年前のアメリカ大統領選挙で「選挙が盗まれた」と主張したトランプ・デマに乗っかってそのまま日本国内にウソ垂れ流した同じ面々だ。だがその後も反省や総括の気配すらなく、現在もこのような政治活動を延々と行っている「厚顔無恥」の人びとともいえる。担がれている候補者女性も同様の体質をもち、カミツキガメのように多くの識者などに噛みついては顰蹙を買ってきた。安倍元首相の死去からまだ2年すぎていない段階で、安倍政治の「付録」にすぎなかった者たちの、最後の悪あがきの一局面と見る。
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2024/4/20 8:13
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自民党と共産党の共通性
自民党と共産党が窮地に陥っている。原因は2つの政党とも「自己変革」できないという共通体質をもつためだ。政治資金規正法改正への自公協議が始まったが、自民党側は自分たちの案すら作成していない。やる気がないとしか思えない。そのため野党第一党の立憲民主からは公明党を野党側に引きこんで「自民党包囲網を作る」(本日付毎日)などの発言も飛び出しているようだ。公明党は国民目線からの改革を訴えるが、自民党がすんなり乗るかどうか心もとない。問われるのは公明党側のスタンスでもある。一方の日本共産党も、自己変革ができない政党であることを顕著に露呈させている。異論を排除することで政党運営できた時代はとうに過ぎ去り、新しい時代に対応して変化しなければならないことは明らかなのに、それができない。結論をいえば、最高指導部層に勇気と決断力が決定的に不足している結果としか思えない。同党の過去にロールモデルがないことは確かだろうが、だからこそ、指導者層の勇気ある決断が求められる。同党は「民主集中制」をゆるやかに廃止する方向で党の民主化を進めるべきだ。それができなければ滅んでいくしか道はない。自民党の変革と、共産党の変革のどちらが先行して進むか。時代に取り残された組織団体は衰退し、変革できた政党だけが生き残る。
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2024/4/19 8:45
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日本共産党の取材対応
市民に開かれた政党を標ぼうする日本共産党が、実はそうではないことは関わったことのある人ならよく理解できる事柄だ。市民に開かれた政党は、単に目先の選挙に勝利するためのキャッチフレーズにすぎず、実際はどこまでも自分たちの存続や損得しか考えていないように見える。そう思った顕著な出来事が最近もあった。先日、取材で同党の埼玉県委員会に電話した際のことだ。私は県委員長に取材中の事柄について関係する人物であったのでコメントをもらうために電話したのだが、最初に電話を受けた女性は「外出中」としばらくやりとりした際に述べ、さらに2~3日後に電話すると、県委員会の固定電話にかけられないようになっていた。いわゆる着信拒否である。たとえば、オウム真理教や統一教会のような団体の悪事を暴く取材者(ジャーナリスト)に対し、それを疎ましく思う団体側が着信拒否するのは肯定しないまでもその行動は理解できる。なぜなら彼らは民間団体だからだ。だが日本共産党はちがう。政治の一角を占めている。政治とは極めて公共性の高いセクターであり、そのためふつうは一応は話を聞いた上で、答えられないならその旨を相手に伝えるなどするのが常識的な行動だろう。それが話も聞かない段階から、いきなりの着信拒否を行った。この委員長には、政治の何たるかの自覚がそもそも備わっていないのだろう。革命よりも、新築マイホームのローン支払いのほうが大事なタイプと思える。そういえば、昨年も「日本共産党の百年」というタブロイド判の冊子が出た際、提供を求めたところそれを拒んだ植木という名の広報部長が共産党本部にいた。同党の取材対応の態度は、どこまでも市民をバカにしている。ほめそやす者は歓迎だが、異論は排除するという最近よく目にする同党の体質そのものだ。念のために付言するが、私の限られた取材体験の中では、地区委員長クラスの対応は非常に誠実で、まともに感じる。やはり「現場」に接しているからそうならざるを得ないのだろう。彼ら彼女らの献身的な行動ぶりが、都道府県や中央レベルの党機関の官僚的態度によって損なわれている現実を残念に思う。
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2024/4/18 7:37
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「大東亜戦争」論争
自衛隊がX上で発信した「大東亜戦争」の記述が一部マスコミで論争を生んでいる。本日付産経は阿比留瑠比コラムで「堂々と大東亜戦争と呼ぼう」の見出しで異論を発しているが、自衛隊自身はよけいな騒動にしたくないとの趣旨で先のXポストの該当部分を削除している。それでも自衛隊内部ではこの言葉はふつうに使われてきたことを指摘したのは昨日付毎日コラムだ。だが「大東亜戦争」は侵略戦争を美化する用語として、問題視する風潮もある。日本政府も基本的には使わない方針だ。その中にあってあえて「堂々と使え」と主張する産経記者の脳内は、基本的には靖國「遊就館」史観そのままであり、先の戦争を肯定的にとらえ、「日本は悪くなかった」との歴史観で染められている。だが当時の日本の民衆が日本の戦争にこりごりとした感情を抱き、新しい憲法を受け入れ、再出発したことは否定できない事実だ。阿比留記者の主張は、当時の日本人全体に対する冒とくそのものであり、戦争を知らない世代が自分たちの立場で勝手に発している軽々しい言葉にしか映らない。彼らには戦争への反省がない。
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2024/4/17 6:16
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空想の「もしトラ」「ほぼトラ」
トランプ前大統領の刑事裁判の一つで初公判が行われた。本日付の各紙朝刊が詳しく報じている。すでに4件の事件で起訴されているが、今回行われたのは不倫の口止め料(2000万円)を弁護士の立て替えで支払った分が、その支払い処理を自分の選挙戦に不利な材料にならないように内容を偽って帳簿に記載した疑い。要するに不倫の口止め料の支払いやその虚偽記載そのものは大きな問題とは思われないかもしれないが、それが自らの大統領選を念頭にしたものであっただけに、学歴詐称と似たところがある。トランプ氏はこれから2カ月程度、水曜を除く平日のすべて、つまり月火木金は朝から夕方まで1日中、裁判所に拘束されるため、まともに選挙活動ができなくなる。さらに6月くらいに陪審による評決(判決)が出る見込みで、そこで有罪となれば、大統領選に大きな影響が出ることは必至だ。本日付東京(共同配信記事)は、「有罪となった場合、最高で禁錮4年を科せられる可能性がある」と指摘。残り3件の裁判がいつ開始になるか定かでないが、今回の裁判で有罪判決が決まり、さらにもう1件でも裁判が始まる事態となれば、トランプ再選の可能性はほぼ無くなると見られる。
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2024/4/16 5:03
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日本会議こそ日本社会のガン
「女性差別的な制度を見直せば経済成長率は倍増する」と述べたのは世界銀行上級副総裁だ。3月6日付の朝日新聞に掲載されている。法制度上の男女格差が主要先進国で最低ランクの日本は、差別的制度を維持していることで経済成長においても大きな損失を被っている実態を指摘したものだ。現在のNHKの朝ドラを見るまでもなく、戦前の女性には参政権すら存在しなかった。それを可能としたのは国家としての自助努力の結果でもなく、戦争に敗北したことによる「外圧」の結果にすぎなかった。もしも自助努力による成果であったら、その後も順調に改革は進んだだろう。だが日本国内の内的変革はさほど進まず、近年も明治志向の安倍政権が長くつづいたため、事態は一層悪化している。明治期を過度に理想化する安倍政治、さらにその根源にあった靖國思想、具体的にいえば日本会議的な発想が、この国の発展を大きく阻害していることは明らかだ。現代日本のガン的存在といっても何ら言い過ぎではないと思う。
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2024/4/15 4:54
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増え続ける世界の軍事費
21世紀が平和の世紀になると信じていた人にはやはりまじめに認識すべきことだろう。イギリスのシンクタンク国際戦略研究所の報告書「ミリタリー・バランス」によると、世界の防衛費は年々増え続け、現在は2兆2000億ドル(328兆円)に及んでいる。2月半ばに共同通信が配信した記事では、ここ10年ほど上昇傾向は変わらず、8年間で7000億ドル(104兆円)ほど増えているので、日本の国家予算程度には世界の軍事費は増えた計算になる。日本政府はこのほど戦闘機の国際共同開発品の輸出に門を開くが、上記の傾向を助長することはあれ、歯止めをかけることにはならないだろう。そうした全体的な世界の趨勢変化を視野に入れた上での政策実現を可能とする政治家は、日本にいったい何人いるのだろうか。
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