日記

2013/06/17(Mon)
印象操作を繰り返す櫻井よしこ
 産経新聞社が後援する「日本が目指すべき憲法の姿」と題するフォーラムが昨日東京都内で開かれ、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が基調講演を行った。櫻井氏は、5月に福島県浪江町が東京電力に慰謝料の増額を求め、集団訴訟を申し立てた事実をとりあげ、「東北に憲法の悪影響が出ている」と、被災者の権利救済行動を日本国憲法のせいにした。また、オレオレ詐欺が横行する社会になったことや、親が死んでも押入れに隠して年金を騙し取っていた事件などを例にあげ、憲法がおかしいから日本人の価値観がおかしくなったと批判した。その上で、現在の日本国憲法の最大の問題点として、家族の大切さが全く書かれていないことを具体的に指摘。諸悪の根源が現憲法であると、日本国憲法を悪者にしたうえで、自民党の改憲案を評価し、さらに産経新聞社がつくった憲法改正案のほうがもっとすばらしいと持ち上げた。
 加えて、中国脅威論を煽る目的で同女がいつも言及する五島列島に100隻以上の中国漁船が入ってきた問題で、中国船がみな新しく、海上保安庁の船より大きかったことなどを強調し、このままでは中国に占領されかねないかのような調子で発言。肝心の、何の目的で中国船が入港したかについては、まったく触れないままだった。
 地元住民に少しでも話を聞けばわかる話だが、台風などの天候不順を避けるために、かつて指定港となっていた港であり、現在はそうした指定港にはなっていないものの、昔からなじみのために中国漁船が入ってくることがある。要するに、櫻井氏は細かな事実関係よりも、自分の主義主張のために内容を都合よく改変して紹介しているだけであり、これがジャーナリストとは恐れ入る。
 また、産経新聞が後援する集会ながら、この日は左派系の水島朝穂氏(早稲田大学教授)がパネラーの一人として参加。理路整然と櫻井氏らの主張の矛盾を指摘すると、田久保忠衛氏は司会の立場ながら、水島氏に自分から反論を加えるなど、公正な司会とはとうてい言えないアンフェアな進行ぶりだった。それでいて、他のパネラー2人と合わせて3人がかりで水島氏にかかりながら、なんの論破もできないお粗末ぶりで、会場に駆けつけた産経愛読者からは、多くの不満や野次が出る始末だった。
 ちなみに、改憲派として知られる慶応大学の小林節教授は、櫻井氏がもっとも問題があると昨日指摘した家族の大切さを説いていないとする問題について、「家族仲良くなんて、最高法で説教されたくない。法は道徳に踏み込まず、が世界の常識。基本的な改憲観が間違っている」(毎日新聞・本日付)と指摘している。上記の産経後援フォーラムの詳報は、7月3日付の産経新聞に掲載されるらしい。