日記

2012/11/16(Fri)
市議会議員の万引き事件
 先週、群馬県太田市の市議会議員(男性、62歳)が市内のスーパーで食料品3点(600円)を万引きし、議員辞職したニュースが流れていた。犯行の動機について、市議は「議会の準備もあり、いろいろとストレスが重なってやってしまった」と話したと報じられている。
 地方の町村議員などは、議員としての実質月収は10万円程度で、議員以外の仕事で生計を立てないと生きていけない面もあるが、太田市は群馬県では高崎市、前橋市に次ぐ第3の都市で、議員報酬だけでは生活できないような市議会議員ではないようだ。結局は、金に困ったというより、本人の言葉にあるように、「ストレス」によって行った犯行ということなのだろう。
 1995年に東村山市議会議員だった朝木明代が起こした万引き事件も似たようなものだった。市内のブティック店で1900円程度のTシャツを盗んだが、都内の市議会議員が金に困っていたわけではない。数々のストレスにさらされた結果だったと今になれば理解できる。その後、この女性は市内駅前のビルの5階付近から転落死することになるが、その背景には、この万引き事件をめぐる処理問題があったと見られている。
 上記の太田市議は罪を認めて素直に議員辞職したものの、朝木市議の場合は、事情が違った。同じ会派を組んでいた同僚市議の矢野穂積と共に、万引き事件をなかったものにしようとさまざまに画策した。ブティック店に嫌がらせ行為を繰り返し、警察に提出した被害届を撤回させようとしたり、矢野と朝木の2人が犯行時間、ファミリーレストランで食事していたことにして、アリバイ工作を行ったりするなどした。だがその工作も、2人が証拠として提出したレジジャーナルの人数や男女構成が異なるなど、「真正」のものではないことが判明。彼らの努力は無駄に終わった。
 こうした最中の95年9月1日、朝木明代の転落死事件は起きた。矢野らは上記の経緯を隠蔽する意図からか、創価学会による謀殺説を声高に吹聴し、週刊誌もそれを鵜呑みにして書きたてた。その後、教団から名誉棄損で訴えられた「週刊現代」「週刊新潮」、さらに矢野穂積らの発行する「東村山市民新聞」など、教団謀殺説を吹聴したすべてのメディアが敗訴した。事実的根拠が認められなかったからである。
 この事件は、真実とは何かということを考える上で、貴重なモデル・ケースとなった。事実を意図的に隠蔽あるいは歪曲したい当事者が介入している場合、その当事者の人格特性あるいは事件の背景にあるものを見抜く「洞察力」が何よりも求められるという貴重な教訓が残ったからだ。
 当時、あの朝木さんがわずか1900円の万引きなどするはずがない、などと真顔で述べて教団謀殺説に加担していたジャーナリストの乙骨正生などは、その意味では、洞察力のカケラすら欠けた存在だったといえよう。
 繰り返しになるが、事実とは何か。「感情」ではなく、冷静な断片的事実の積み重ねこそが重要である。事実は≪意図的な感情≫によって最も歪められやすいものであるとの認識が不可欠だ。戦争責任などの各種の歴史問題においても、同じ「教訓」は、そのまま適用できる。
 朝木明代は矢野穂積と共に行ったアリバイ工作に失敗し、窮地に。検察庁への出頭を命じられ、刑事裁判になる可能性が強まった矢先、、転落死した。つまり、「万引き事件を苦にした自殺」と見られており、それを覆す客観的な証拠は、事件から17年以上すぎた今も何も存在しない。

 【毎日jp】 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20121113ddlk10040106000c.html