日記

2012/01/18(Wed)
歴史に残る“墓穴訴訟”(5)  パラノイア相当と認定された、珍しい市議会議員
 東京・東村山市にバッジをつけたペテン師のような市議がいる。自分は市議会選挙で落選したにもかかわらず、同じ会派の若い女性の当選を返上させ、繰り上げ当選して市民の顰蹙をかったり(最高裁によって当選「無効」と判断された)、市議会の対立する議員やあるいは議員全員を裁判で次々に訴えるなど、目的のためには手段を選ばない行動で知られる。そんな政治グループが発行してきたプロパガンダ新聞に対抗し、市民サイドで発行した新聞(手を結ぶ市民のニュース)を矢野らが名誉棄損で民事提訴したのが本件である。
 原告は矢野穂積、朝木大統、朝木直子の3人で、被告は東村山在住の市民ら9人。9人の中には95年9月、ビルから転落死した朝木明代市議が起こした万引き事件の被害者である洋品店の女性も含まれる。
 訴訟は97年12月に800万円の損害賠償と謝罪広告を求めて起こされた。矢野側が問題としたのは、原告らが朝木明代の万引き事件の後、洋品店を訪れて脅した旨の記述(記事1)、矢野らが明代の万引き事件を隠ぺいするためにアリバイ工作を行ったなどの記述(記事2)、さらに矢野について「パラノイア」と指摘した記述(記事3)など、4つの記事。なかでも記事3で問題とされたのは、次のような記述内容であった。
 「矢野氏は物事を自己本位に解釈して、訴訟を計画し、これをもって時には脅し、執拗なまでに実行します。また自分の憶測を理屈づけ、朝木直子さんという媒体を巧みに利用し、多くの市民を味方に惹きつけようとしています。精神分析のリポートによりますと、パラノイア(偏執病・妄想病)の中でも好訴妄想者がこうした傾向を示す場合が多いと云います」(97年9月1日付号外)
 2004年3月17日に出された一審判決(東京地裁八王子支部)では、矢野らの訴えを≪すべて棄却≫したうえで、記事3のパラノイアに関する論評について、「表現自体はやや穏当さを欠くものであるが、当該論評の前提たる事実もまた相応の根拠があると認められる」と認定した。
 一審原告の矢野らは判決を不服として2005年4月に控訴。ところが同年9月、控訴を突然取り下げ、一審判決は確定した。
 つまり、東村山市議会議員である矢野穂積は、日本中の数万人におよぶ「公職者」の中で唯一、裁判所によって「パラノイアと論評されても仕方のない人物」と認定された希少価値をもつ人物といえる。自ら訴えを起こさなければ、このような判決が残ることはなかったという点で、これも歴史に残る墓穴訴訟の典型といえよう。