サッカーやボクシングなどを例にとると、防衛だけにまわる戦い方で勝機が生まれないことは明白であろう。攻撃があってこそのスポーツだが、この法則は、人生全般にも当てはまる。俗に、守りより攻め、ということにもなろうが、言論という分野において、それを象徴的に実践してきた例がある。しかもその特徴の最たるものは、攻撃の「武器」は事実に基づかなくても構わないということだった。
　東村山市議の矢野穂積が９５年の女性市議転落死事件において、特定教団を名指しし、女性市議が何者かに殺害されたとわめき立てたことが東村山デマ事件のそもそもの発端だが、これは矢野本人にとっては典型的な「攻め」の戦いだった。わかりやすく考えるために、逆の場合を考えてみよう。
　矢野がこのような悪意に満ちた積極的な行動をとらなかったとしたらどうなったか。世論は、朝木明代が死亡した原因を詮索し、その結果、万引き事件→アリバイ工作の流れも浮き彫りになり、その責任追及の世論の多くが、矢野本人に向かったことは間違いない。
　ここで矢野が「教団謀殺説」を強硬に主張したことで、そうした詮索の力は弱まり、むしろオウム事件を背景に時流にのって、「謀殺説」のほうが大手をふってまかり通るというアベコベな結果になってしまったわけだ。だれもが感じていることだが、世論は「風」に流されやすい。事実かどうか、善か悪かという価値判断を飛び越え、安易に流れてしまう傾向をもっている。
　一般にプロパガンダを得意とする者たちは、そのへんの構造や仕組みが肌身感覚でよくわかっていて、世論の動向に敏感に反応する。ただし一般人と異なる点は、主張内容が事実かどうかといったことにはさして頓着せず、自分の身を守るためならどんな絵空事であろうと、平気で“活用”してしまうことにある。
　矢野穂積のこれまでの行動の軌跡をたどると、そのことは明白な結果となってあらわれる。もっとも顕著な事例は、やはり先の９５年のデマ事件（＝矢野が女性市議の転落死を「他殺」をわめきたてて自らの責任を回避しようと行動したこと）であることは疑いようがない。
　同人らが市議会内で他党の議員などに焦点を定めて徹底的に批判対象とするのも、スケープゴートを設定し、そこに世論の関心を仕向けることで、自らの政治責任や過去のイカサマ的行動の数々を指摘・認識・非難されることを避ける目的が込められている。まさにこれこそが、彼らにとっての最大の効用なのだ。
　そうしたプロパガンダの最も有効な宣伝手段は、現在のところ、『東村山市民新聞』という名の紙爆弾である。「紙」といっても現在は、それに加え、「インターネット」や「ラジオ放送」など、多角的なメディアを活用し、宣伝効率を高めている。だが、そこに書かれていることは、歪曲された事実や自分に都合のいい部分だけを取り出した日本共産党顔負けのプロパガンダの数々だ。
　政治手法として、矢野が「攻撃」という武器を捨てるとすれば、彼らはその「虚飾」と「虚偽」によって早期に崩壊してしまうはずだ。回転しているこまが、回転を止めると、転んでしまう構図によく似ている。矢野にとっての「回転」とは、他党議員や他団体への攻撃であり、それなくしては自分たちは生き続けることができない。
　創価学会もそのための対象の一つとされているだけのことであり、矢野穂積という一人のイカサマ師が生きていくための「道具」にされているだけの話にすぎない。ただ一つはっきりしていることは、そうした市民ダマシの“イカサマ的手法”は長く続くものではないし、歴史的にも厳しく断罪される結果になるだろうということだ。