日記

2009/09/23(Wed)
民族差別を煽る『マンガ嫌韓流』作者の「実名」
 新宿区の地下鉄早稲田駅の近くに小さな出版社が産声をあげたのは95年9月のこと。2000年に江東区に移転し、いくつもの会社を吸収合併したあと、05年3月、千代田区の靖国神社にほど近い場所に進出した。さらに現在は、神田神保町の一等地に、ビルの6フロアを使って事業を展開する。会社名を晋遊舎(しんゆうしゃ)という。
 特筆されるのは、同社が05年に『マンガ嫌韓流』を出版し、現在、4巻のシリーズ累計で90万部を突破したなどと帯で宣伝していることである。韓流ブームの“裏返し”として出てきた現象だが、上記の会社の歴史は、そのまま同社の売上の推移を反映しているようにも見え、このマンガで時流に乗り、事業を拡大したことは明白だ。
 『マンガ嫌韓流』自体は、新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)の流れをくむ内容であり、小林よしのりのマンガの“亜流”といった感じのものだ。シリーズの4巻目が在日コリアン問題に特化した内容となっており、“日本のネオ・ナチ”こと「桜井誠」(在日特権を許さない市民の会・会長)も、同社から複数の著作を出している関係か、協力した痕跡がうかがえる。
 桜井自身も同社から『反日韓国人撃退マニュアル』という新書を出しており、自分のホームページなどでも“宣伝”に使っている。
 不思議なことは、『マンガ嫌韓流』の作者も、さらには『撃退マニュアル』の筆者である桜井も、在日コリアンらの通名使用などを「在日特権」と批判しながら、自分たちも「偽名」を名乗るという矛盾した行動をとっていることだ。
 『マンガ嫌韓流』の作者・山野車輪については、同人が織原城二氏の韓国名を指摘したことなどから名誉棄損で訴えられた裁判で、実名が判明している。まさか裁判所にまでウソをつくとは思えないので、おそらく本当だろうと思う。2人の仮名と実名を示すと、次のようになる。

  ペンネーム → 実名
  山野車輪 → 山口真一
  桜井 誠 → 木村誠、高田誠 (いずれも未確認)
 
 彼らの書物の内容は、日本による韓国併合以来のこの100年の歴史的経緯(特に日本側の加害部分)をすっぽりと意図的にネグり、在日コリアンは日本に居させてやっている「居候」の身分のくせに、多くの「特権」を使ってけしからん、その上参政権まで求めてやがる、こんなやつらは母国に全員送還せよ、といった趣旨で貫かれており、人種差別・民族差別を煽るだけの、国が違えば「犯罪」に問われかねない内容だ。
 今から99年前、当時の日本政府が韓半島を植民地支配することがなければ、日本に在日韓国・朝鮮人は存在しなかったという歴史的経緯については、触れようとさえしない。
 このような書物で、冒頭の晋遊舎は大儲けし、社長は現在、会社名義の“億マンション”に住所を置く。
 在特会の会長である桜井誠が隠している「実名」も、同人を民事提訴してみれば、すぐに明らかになるだろう。同人は日本の多くの都市で、敵対的運動者に対して、「ゴキブリ」などと拡声器で叫び、多くの名誉棄損行為を重ねてきたことは明らかだから、心ある被害者が訴えれば、さまざまなものが見えてくるはずだ。だが現実にそうなっていないのは、日本の左翼勢力の足元が弱まりすぎている反映と小生は受けとめている。
 聞くところでは、彼らを、日本が批准している人種差別撤廃条約に基づいていくらでもやれる余地がある、代理人を引き受けてもいい、という弁護士はすでに出てきているらしい。桜井に対する新たな裁判が起きるのは、もはや時間の問題かもしれない。