日記

2008/10/01(Wed)
「草の根」の闇4  被害者を加害者に仕立て上げる「行動原理」
 数年前のことになるが、朝木明代が95年6月に万引きを働いた東村山駅前の洋品店を取材で訪れたことがある。電話でアポイントをとり同店に赴いたが、取材対象となった店主は、「やっぱり取材をお断りしようか思っている」と筆者に述べた。それでも説得しつつ駅前の喫茶店で1時間ほど話を聞くことができたが、結局、そのときの取材内容を活字にすることはなかった。当時、店主はすでに5件もの裁判を抱えてきており、これ以上、訴訟ざたはこりごりというのが最大の理由だった。要するに「嫌がらせ」を恐れていた。5件のうち、自ら訴えた裁判は1件、さらに訴えられた裁判が4件ということだった。取材の最後には、「念書」に署名させられた。この取材でご迷惑をおかけすることは決してありません、といった内容だったと記憶している。明らかに「恐怖」の感情が支配していた。
 店主がなしたことはごく当たり前のことにすぎなかった。1995年6月19日、東村山市議会議員であった朝木明代が、同店において1900円のTシャツを金を支払わずに持ち去ろうとした。それを目ざとく見つけた店主が追いかけていって、詰問した。手を挙げさせると、Tシャツはバサリと音を立てて地面に落ちた。店にいた客が“証言者”となり、警察に訴え出た。店主が朝木の万引き行為を目撃したのは、これが2度目だったから、そのときは用心して見ていたのだ。
 その後、朝木明代と矢野穂積は、この小さな洋品店に対し、直接訪問するなどして「お礼参り」的な行動を重ねるようになる。店主が教団とグルになって事件を捏造したなどと何度も吹聴した。さらに自民党の後援会員にすぎなかった店主は、あたかも創価学会員であるかのようなデマすら流された。いずれも、朝木・矢野にとって都合のいい「教団陰謀説」を流布するための内容にすぎなかった。つまり、自分たちこそ「被害者」であることを“演出”するための、手のこんだ≪偽装工作≫だった。
 朝木明代の死亡後、矢野穂積と朝木直子は、この店主に多くの裁判を吹っかけた。店主はごく普通の市民にすぎなかったが、慣れない裁判のために、高額の弁護士費用を支払う羽目になった。店主がしたことはただ一つである。万引き犯を告発した――自分の店が「実害」を受けた悪行を見過ごして泣き寝入りすることを潔しとしなかった。ただそれだけのことである。それでいて、「被害者」は「加害者」に仕立て上げられていった。加害者の罪を消すために、加害者側が自ら仕組んだ行動の結果だった。もうこりごりだ。筆者が取材に訪れたときの、店主から受けた印象はそのようなものである。
 同氏は朝木明代の万引き事件以後も、仕事を通じて複数の万引き犯と接したようだった。一人は警察に突き出した。もう一人は、謝罪し、「買う」といったので許したという。医者の妻だったらしい。「お金がないわけではない。お金で買えばいいのに、と普通の人はみな思う」。朝木明代も同様であったろう。わずか1900円の持ち合わせがないわけではなかったはずだ。
 話は飛躍するが、このように、「被害者」を「加害者」のように見せかけ、逆に「加害者」である自分を「被害者」のように見せかけるのは、サイコパス的人間の≪常套手段≫とされる。サイコパスは一言でいえば、良心の呵責をもたない、野放図な人間のことだ。結論としていうと、一連の東村山デマ事件は、矢野穂積というひとりの人間の「人格特性」をくみしないと、「真相」は決して見えてこない。
 実は、万引き事件については、朝木の事件とよく似たケースがある。最近、ロス移送の決定で話題になっている日本国民ならだれもが知っている人物の起こした万引き事件である。2007年3月、この人物は地元のコンビニ店(神奈川県平塚市)で朝木明代と同じような万引き行為を働いた。盗んだのはサプリメント商品6点、金額にして3632円である。商品がなくなっているとの報告を従業員から聞きつけた店のオーナーが、監視カメラの映像を確認したところ、この人物の犯行が発覚した。店側は警察署に被害届けを提出。一方、この人物は店内の監視カメラで録画されていた歴然たる証拠を突きつけられて、行為そのものはしぶしぶ認めたものの、「忘れていた」などと言い逃れを繰り返し、決して自らの「非」を認めようとはしなかった。最後は、このコンビニ店らを逆に民事提訴するといった行動をとった。コンビニ店がテレビ局に「証拠映像」を提供した行為をつかまえて、肖像権の侵害に当たるなどと難クセをつけ、弁護士を7人も立てて≪被害者≫側への「お礼参り」的な行動に出たのである。
 一方の、朝木明代の万引き事件の場合は、万引きそのものは明代のなした行為だったが、その後の「お礼参り」的行動やアリバイ工作に、矢野が密接に関与していたことはすでに指摘されている。
 彼らに共通する特徴は、@絶対に自分の罪を認めないAありとあらゆる方法を使って責任を回避しようとするB証拠があってもさらに言い逃れを続けるC逆に被害者を徹底的に攻撃する――。さらに「訴訟マニア」であることも一致している。サイコパス的人間は、言い逃れが天才的にうまく、ずる賢い。さらに常人の感覚からすると、驚くほどにタフネスだ。へこたれるということがない。
 矢野穂積と三浦和義の行動を追っていくと、万引き事件における対応ひとつとっても、その「行動原理」は驚くほどに似通っている。(つづく)

【参考サイト】
http://tetorayade.exblog.jp/6706007
http://tetorayade.exblog.jp/7067186
http://tetorayade.exblog.jp/8089039