日記

2007/07/26(Thr)
スーツを着た蛇 1
 “WITHOUT CONSCIENCE”(邦訳名『診断名サイコパス』)の著作で知られるロバート・ヘア博士の2冊目の邦訳となる共著の書籍がこのほど発刊された。『社内の「知的確信犯」を探し出せ』(ファーストプレス、2007年7月25日発行)というものだが、昨年出版された原著のタイトルは“SNAKES IN SUITS”で、文字通り直訳すると「スーツを着たヘビ」ということになる。この本は、大企業や大きな組織のなかに存在する“ホワイトカラー・サイコパス”を題材にしたもので、読んでいて興味深い指摘が随所にある。
 サイコパスは、ご存知のとおり、「平気でうそをつき、他人を操り、策略をめぐらし、冷酷で身勝手に振る舞うといった有害な性質に根ざしたパーソナリティ(人格)障害」(P2)を指す言葉だ。精神病理学においても最も研究の進んだ分野であり、いまも現在進行形の形で多くの事実が解明されている。本書によると、サイコパスと診断される人は、人口の約1%という。さまざまなサイコパスと思われる人物の行動歴が紹介されているが、特徴的な記述を断片的に抜き出してみよう。

 ●犯罪者として逮捕されたサイコパスが被害者に責任を転嫁することも珍しくない。(P80)
 ●類縁団体(同じ価値観や信念を持つ宗教的、政治的、社会的な集団)のメンバーは、メンバー同士が信頼によって固く結びついているため、サイコパスにとってはきわめて魅力的なターゲットになる。(P119)
 ●彼女はあるグループに何かを話した後で、別のグループにはそれと正反対の話をするんです。Aに対して「Bがあなたのことをこんなふうに言ってたわよ」と告げ口した後で、今度はBのところに行って、Aがあなたの悪口を言っていたと耳打ちする、といった具合です。(P173)

 “依頼主を恐喝して資格を失った元弁護士”「山崎正友」の場合、81年に犯罪者として逮捕されたが、被害者である教団側に責任を押し付け、刑事裁判では多くの偽証を見破られ、実刑判決に服した。本来、“善意の集団”である宗教団体は、こうした人物らから見れば、極めて“操作”しやすい土壌のターゲットに映っていたかもしれない。山崎は、日蓮正宗と教団との間に立ち、宗門では教団幹部がこう言っていたと法螺をふき、教団に来ては、宗門幹部がこう語っていたと吹聴した。そうして、両者が喧嘩するようにわざと仕向けた。本書では、これらは「サイコパスが使うテクニックの一つ」(P375)と指摘している。