門田隆将のウソだらけの主張

愛知県で言論の不自由展が再開されたことで、自称・愛国者たちが躍起になって行動を始めている。「活動家」さながら座り込みを行った某市長もさることながら、今こそかき入れ時とばかりに虚偽の言論をふりまいているのが、門田隆将こと門脇護(61)だ。同人の主張によると、言論の不自由展で問題になっている一つ、少女像に関し、2つの点で虚偽があると述べている。その一つとして、「慰安婦は性奴隷ではない」と同人は主張する。その根拠として、当時の朝鮮の新聞広告を例に引き、「上等兵の給料およそ10円の時代にその30倍以上の収入を保証されて集まった女性たち」「彼女たちの収入は、当時の軍司令官の給与をはるかに凌駕していた」と述べている。結論として、ファクト・チェックなどなきに等しいお粗末なレベルである。 要するに同人のいわんとすることは、慰安婦は法外な値段で募集されていたからそれなりの収入もあったはず、金目当ての売春婦であって性奴隷などの言葉はとんでもないというものだろう。 だが少しでも慰安婦問題を取材したことのある者ならすぐに思い至ることだが、この種の新聞広告は女性たち各自に向かって発せられたものではなく、それを管理する業者あてになされたものであることが常識だ。また実際にそのような法外な給金が女性に支払われたという普遍的な事実も存在しない。常識で考えて「軍司令官の給与をはるかに凌駕する」給金を慰安婦全員に支払って、そもそも戦争が成り立つはずもない。最初から常識で考えてわかる話だ。 だが、門田はこの一片の新聞広告をもとに、慰安婦=性奴隷は事実ではないとの主張を「全面展開」する。 韓国出身の女性の多くが意に反し、つまり騙されて慰安婦にされた――。その事実は動かない。まして日本人女性と比べ、多くがうら若い、処女同然の女性たちであった。戦地で日本兵に重宝されたのはそうした若さの理由による。逆に日本からは玄人女性が徴用されたケースが多く、韓国からは素人が徴用された。そうした制度的背景もまったく書かず、門田は、慰安婦は「あくまで日本女性たちが中心だった」などと、事実関係の歪曲に忙しい。 ファクト・チェックがこれほどにいい加減で、お粗末な人間でも、いまの日本ではペンを握ることができる。現代日本社会の病理そのものである。

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