戦争準備を下支えするメディア

右派論壇誌の大きな新聞広告が目新しくなくなって久しい。その内容はおどろおどろしい面もあるが、日本の隣国である中国や韓国が異常国家であり、日本より劣る民族であることをあげつらう内容が一つの特徴で、その関連として朝日新聞を標的にし、日本の侵略戦争を正当化するといった顕著な特徴がある。現在、そうした論調を発信する月刊誌が4つある。創刊の古い順に、『正論』(産経新聞社)、『WiLL』(ワック)、『歴史通』(ワック)、『Hanada』(飛鳥新社)だ。

『正論』の広告は産経新聞がメインだが、他の3誌は他の一般全国紙にも大きく広告を打つ。そのため、朝日、毎日などのリベラル系とされる新聞にも、極右雑誌の主張を含む広告が掲載されるという不思議な現象が生じて久しい。そのため世間では、これら4誌の主張するような言論が、日本社会でもだんだんと大手を振って歩くようになった経緯がある。

一言でまとめると、これらの論調はおしなべて、多文化主義を認めるのではなく、日本は素晴らしい、過去に間違った戦争はしていないといった主張をふりかざすもので、自民族優先主義あるいは一国主義というべきものだ。そうした論調が他国との協調につながるとも思えず、逆に、敵対意識を高めるだけの結果になるとしか思えない。

現在の日本の言論状況は、そうした「一極」に流される傾向が顕著で、いわば戦争を誘発するための土壌を整える意味での「戦争の文化」が拡散されている状況と認識すべきだろう。

例えば、今日付の毎日新聞には『なぜ大東亜戦争は起きたのか?』という、元産経新聞記者が書いた書籍の広告が大きく掲載されている。その紹介文には次のように書かれている。

「戦後の教科書では絶対にわからない大東亜戦争の真実。日本は祖国の自衛と、白人による500年以上にもわたる残虐な植民地支配からアジアを解放するために立ち上がった。そして、アジアの人々は双手をあげて日本軍を歓迎した。これは、20代の日本の若者たちが見事勝利を収めた記録である」

ここには過去の戦争に対する責任の念もなければ、100%正義だったという自己陶酔の感情があるだけである。このような主張がリベラルとされる毎日新聞に大きく掲載されるのが日常になっていることは、大きな問題だ。

さらに本日付の日経新聞には、『日本人は「国際感覚」なんてゴミ箱に捨てろ!』と題するケント・ギルバード氏の書籍広告が載っている。そこには、日本は平等主義、平和主義、国際協調主義の3つの主義を捨てれば、もっと幸福になる!との宣伝文句まで付せられている。

日本人が一方の極にふれやすい民族というのは、歴史家の半藤一利氏が過去の教訓を踏まえて語った言葉だが、いまの言論状況を見る限り、まさにぴったりの状況になってきたと思われる。その先に見えてくるのは、“戦争を誘発する社会”にほかならない。

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