朝日社説の見識

新聞の社説に署名入りのそれが掲載されるようになってどのくらいたつだろうか。本日付の朝日新聞社説は日韓関係の現状について論述しているが、通り一遍の無味乾燥な社説ではなく、署名入り(箱田哲也記者)で読み応えがある。記事では「安倍政権は、半導体材料の輸出で刀を抜いた」と状況を説明し、「今回の事態は韓国政府の無策が招いた」と非難しながらも、「本当の解決につながるのか」と疑問を呈している。国際社説担当のこの論説委員によると、韓国では政治家や市民団体が「反日」を呼びかけても空回りするのが現状であるのに対し、今回安倍政権が「抜いた刀」によって、「日本の信頼は大きく揺らいだ」だけでなく、「韓国人の多くが、日本に道徳的な強い非があると感じれば話は違ってくる」と憂慮する。一方で、産経新聞系列の言論人(私は彼らを「運動家」ととらえる)は、韓国にお灸をすえることを煽動し、冷静な行動とは思えない振る舞いを公然と行っている者もいる。門田隆将などはその典型であろう。同人は朝日新聞を韓国擁護の「運動家」と蔑視するが、自分自身が靖国思想擁護の「運動家」になっている事実は知らぬふりだ。概して、左の言論に対し、右のそれは粗雑で、情緒的である。 「沈黙の螺旋」理論でいうと、現代日本は、右の言論がさも正当のように錯覚されて久しい時代だ。戦前日本で、戦争に突入することが「さも正当のように感じられた」時期を思い起こすとよい。熱狂は、後世において必ずしも「正しかったこと」にはならない。 中道は、感情に流されず、あくまで冷静に物事をとらえていくべき立場だろう。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。