言論「劣化」の時代

本日付の産経新聞に掲載された書籍広告。祥伝社という出版社が掲載している大きな広告だが、あらためて時代の様相を感じさせる。ケント・ギルバードと百田尚樹の大きな写真とともに、書籍のタイトルは『いい加減に目をさまさんかい、日本人!』。さらにサブタイトルに「これ以上のさばらせるな! めんどくさい韓国とやっかいな中国&北朝鮮」――というものだ。

私が夢想したのは例えば1990年代にこうした類いの書籍広告が打てただろうか、はたして時代にマッチしただろうかというものである。過去の紙面をふり返っても言えることだが、広告は時代の雰囲気をあらわす。この広告もそうした象徴的なものに思えてならない。私なりに現代日本の風潮を列記してみると、次のような言葉が浮かんでくる。

一つは、威勢のよさ。この本のタイトル、サブタイトルにもそのまま言える。

第二に、表現の野卑さだ。つつましさといった日本人の良質的なものはどこにも感じられない。言葉を変えれば、どぎつさとも言い替えられよう。

三番目に自民族中心主義、自文化中心主義が根底にあること。さらにその裏返しとしての他民族への排斥感情が挙げられる、「嫌中嫌韓」などまさにそうした風潮を証明する典型的な言葉だ。

現代の日本社会において欠けているのは、一歩引いた冷静さ、露骨な感情から突き抜けた客観性、一言でいえば「寛容」という言葉に行き当たる。日本社会の顕著な特徴の一つは、「寛容度」が著しく劣化していることだ。

 

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