二重国籍考

昨日付のある新聞で、ノーベル文学賞を受けた日系イギリス人男性の話が出ていた。もし日本が二重国籍を認める国であったら、堂々と日本人として賞賛できたのにと惜しむような内容のコラムである。そこでこのカズオ・イシグロ氏について調べてみたが、話はそんなに単純なものではないように思う。まず両親はれっきとした日本人のようであり、日本人として生まれ、イギリスに移住した人物という。成人するまでは日本国籍であったが、その後英国籍を得たということだから、自分の意思でイギリスに帰化したということだろう。

実は世界で二重国籍を認めるかどうかの議論は、私の認識では、国際結婚した親をもつ子どもにおいて主に発生するものであって、この場合、両親の国籍を二つとも受け取るので両方とも認めるべきという主張になる。一方で本人の意思による「帰化」の場合は、二重国籍を認める国は今もほとんどないのではないかと思う。少なくとも私が調べた十数年前の状況ではそのような結果だった。

つまり、このカズオ・イシグロ氏の場合、仮に両親のどちらかがイギリス国籍であって、必然的に子どもである同氏が日本国籍とイギリス国籍の二重国籍状態になっていて、日本の国籍法により、その後に日本国籍を放棄せざるをえなかったというのであれば、出生による二重国籍は認めるべきといった議論になる。だが、今回の場合はそれには該当しないように感じる。

 

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