◆門田隆将1 「寛容」な日本社会で生き延びる  

「門田隆将」という名のノンフィクション作家をご存じだろうか。元「週刊新潮」のデスクをつとめ、2008年に退職。独立後は、日本人の生きざまを体現した人物を描くことをライフワークとし、さまざまな作品を発表してきた。当初はスポーツ分野などが多かったようだが、その後、戦争物、原発事故などに関心を広げる。思想的には朝日新聞を目の敵にし、「日本が嫌いなら日本から出ていけばよい」(趣旨)といったことを平然と新聞紙上で活字にしたりする。あのレイシスト集団・在特会は、コリアンは韓国に帰れなどと公然とデモを行って社会問題となったが、この人物の場合、同じ日本人に対して日本から出ていけといっているのだから、ハラスメントの程度はより深刻といえよう。  現在は産経新聞を主体とする媒体や右派文壇誌の月刊「WiLL」や「Hanada」などに寄稿。最近の日韓経済戦争については、韓国への制裁を声高に主張してやまない。仮に韓国人客を主要取引先としているホテルなどが倒産したら、この御仁は自分のポケットマネーで補償する用意はあるのだろうか。産経新聞などの出版広告で顔写真がよく出るので、その姿を見たことのある人も多いかもしれない。  この人物には、言論人として、やってはいけないことに手を染めた「過去」がある。「週刊新潮」時代、早くからエース記者として期待されながら、編集長になれずに退社せざるをえなかったのは、その「過去」と密接な関係があったからと言われている。また独立後も、自らの本名(門脇護)を名乗ることなく、ペンネームで仕事をせざるをえなかったのは、「過去」の罪責と無縁ではないようだ。  日本では過去にどのような破廉恥行為を行っても、時間がたてばいずれ社会的に免責されるというゆるやかな風潮がある。潔癖性に乏しく、すぐに忘れてしまう民族とも形容される。仮に破廉恥行為が、痴漢行為などの色物沙汰なら、日本社会の記憶にも比較的長く残ったかもしれない。だが言論の世界において、「捏造」などといった行為は、時間がたてば許されてしまうのがこの国の国民性ともいえる。いうなれば、ケジメをつけない民族なのだ。  そんな曖昧な国民性という土壌のもと、「門田隆将」は生き延びてきた。いまでは右派論壇の「顔」のような振る舞いを見せているが、同人にそのような振る舞いをする資格がはたしてあるのだろうか。この連載はその「資格」を問うものである。(不定期連載)

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