「扇動者」としての門田隆将

アメリカのトランプ大統領が自身に批判的な民主党の移民系女性議員などを念頭に、「アメリカが嫌いなら出て行け」との趣旨の発言をツイッターで行ったことが問題になっている。今月中旬の出来事だ。よく似た言説は日本でもいたるところに転がっている。在日特権を許さない会などはすでに10年ほど前から同様の主張を街頭で堂々と行っていた。在日コリアンをあげつらい、そのように主張していた。いまでは右派文化人あるいはジャーナリストと称する人間も同じようなことを言っている。例えば、元週刊新潮記者で、現在は売れっ子の作家(?)となっている門田隆将(本名・門脇護)などは、自著『新聞という病』の中で、朝日新聞や毎日新聞をこき下ろし、こう書いている。「私は朝日に問いたいと思う。それほど日本がお嫌いなら、なぜいつまでも日本にいるのですか、と」。要するに、日本が嫌なら出て行けと、日本人が日本人に向かって言っている。この人物は朝日や毎日を指して「反日」と罵る。要するに、昔の「非国民!」というレッテルを「反日!」にすり替えただけのわかりやすい図式だ。さらに朝日新聞などを「政治運動の機関紙」などと口汚く罵って平気な感性の持ち主だ。それでいて自身は産経新聞のみを一方的に持ち上げ、その二項対立の図式のもと、一方の側から、一方の側を罵っているだけである。 もとより、人間社会には多様性がある。人種、宗教、信条すべてにわたる。そうした違いを認めた上で調和していくのが人間社会のあるべきモデルであろうが、門田のような手合いは、自分の主義主張の立場しか認めない。私なりの言葉にすれば、偏狭的・唯我独尊主義ともいうべき立場である。その点では右翼も左翼も実はそっくりで、こうした門田を象徴とする言動を見ていると、日本共産党の唯我独尊ぶりと瓜二つに見える。門田的なものと、日本共産党的なものは、実際は「同じ穴のムジナ」にほかならない。 その意味で、門田隆将はジャーナリストあるいは作家というより、実際は産経新聞系列(靖国思想系列)の政治運動体の「尖兵」にほかならない。彼の政治運動を私なりに定義すれば、「自分たちの主張に反する意見は叩き潰せ」「朝日を潰せ」という≪運動体≫に尽きる。こういう手合いを一般には「扇動者」と称するのではないか。

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