“嫌中嫌韓本”に手を出した講談社

中国や韓国をあしざまに罵り、日本民族のほうがいかに優れているかといった主張をもりこむいわゆる「嫌中嫌韓本」が本屋に氾濫し始めたのは数年前のことだ。これまでこうした書籍はキワモノ本の一種として、良識とプライドをもつ「大手出版社」は手を出さないものと勝手に思い込んでいたが、現状はそうではなくなっているようだ。

本日付のある全国紙で、講談社がケント・ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』という著書を大々的に宣伝しているのを目にした。そこには「韓国に何か期待してもムダなので無視!」「中国と関わらずとも日本は全然、大丈夫!!」などのキャッチコピーが付記され、「日本人と彼らは全くの別物です」とある。要するに、中国人や韓国人よりも日本人は優れた民族であるということを、アメリカ人の口を借りて主張している内容にすぎない。これは自民族中心主義(エスノセントリズム)の典型ともいうべき主張であり、共生社会をめざす方向とは明らかに逆の論調だ。その横には『日本の武器で滅びる中華人民共和国』という本の宣伝も並ぶ。この本では著者は中国を「シナ」と呼称してやまない。また先の本では、韓国・中国がダメな理由は儒教に毒されているからであり、日本はその影響を受けながらも武士道という独自の文化を作り上げ、天皇を中心とする素晴らしい社会をつくってきたとヨイショするものだ。

私が驚くのは、こうした本が経営の苦しい中小出版社から出されるのではなく、講談社という日本でも最大規模の出版社から出される事態になっているという現実の姿だ。言論に矜持というものがなくなっている証左に思える。日本もとうとう行き着くところまで行き着いてきた感がある。

 

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