主張の8割が著者に当てはまる愚かな本

今日付のしんぶん赤旗が気になるニュースを載せていたが、本日は産経新聞で大々的に書籍広告が打たれているこの問題を取り上げる。すでに何度か取り扱った門田隆将著『新聞という病』の“病気”のことだ。この書を手にとればわかるが、この本のキーワードは「反日」「日本を貶める」「運動体」などの言葉だ。いずれも大きくいえば朝日新聞を対象にしており、あるいは朝日に同調する人びとを指して「反日」のレッテルを貼り、「日本を貶めている」などの身勝手な“脳内論評”を行い、悦に入る内容である。本書は朝日新聞を「政治運動体の機関紙」と小バカにするが、発行媒体は一方の極である産経新聞だ。根底にあるのは精密な論理ではなく、浅はかな感情にすぎない。かつてこの国にも、国家の方針に従わない人間を「非国民」などと罵り、従わせた時代があった。それとよく似ている。共通するのはただただ「威勢がいい」ことだろう。門田がこの書で主張する内容の多くは、実は門田自身にそのまま当てはまることばかりだ。その事実を当人は自覚さえできていないようだ。だからこそ、このような高飛車で、短絡的な主張が真顔でできるものと感心する。本書の中で門田は、朝日新聞社長の国会招致にまで言及する。権力が一報道機関に「制裁」を加えることをジャーナリストが煽っているのだ。もはや「狂気」としかいいようのないレベルだろう。この書における「新聞」を、かつて門田が在籍した週刊新潮時代の「週刊誌」に当てはめれば、そのまま当てはまることがあまりにも多い。ファクトをないがしろにし、多くの無実の人間を被害者にしてきたのは当の門田本人だ。彼は自身がかつて行った罪を、そのまま無自覚に、朝日新聞などに向けているにすぎない。言行不一致という点では、これほど愚かな言論人もいないと感じる。

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