日本賛美の風潮広がる現代

反知性主義という言葉がはやったのは2~3年前だが、この夏の新聞各紙を読んでいて、気になる書籍広告を手元に残しておくと、それが幾つかたまった。いずれも歴史の真実(それも世間的常識)を覆すようなタイトルで、「現代」という時代を明らかに象徴しているように思えてならない。タイトルを順に示すと、以下のようになる。

『日本人を精神的武装解除するためにアメリカがねじ曲げた日本の歴史』(ハート出版)

『大東亜戦争は日本が勝った』(ハート出版)

『欧米の侵略を日本だけが撃破した』(悟空出版)

真ん中の書籍広告は産経新聞の掲載(8月15日)だが、他の2つは異なる。2つは毎日新聞に8月8日付、16日付に掲載されたものだ。毎日はリベラル系新聞に位置づけられる。

これらの書籍が強調するのは、日本はあくまでも「被害者」であり、さらに欧米の不当な攻撃を撃破した「奇跡の国」という、「自民族優先主義」を絵に描いたような内容のようだ。

日本の現在の言論状況が大きく「右側」に振れているのは、すでに客観的事実に等しいものだが、言論状況だけを取り出して比較した場合、先の第二次世界大戦中に戦争を煽ったメディアの広告と、たいして印象は変わらないのではなかろうか。

多様な言論が、いまほど求められている時代はない。

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