女人禁制の島

ユネスコの世界文化遺産にこのほど登録された福岡県の沖ノ島。この島は宗像大社が所有する陸の孤島で、古代から朝鮮半島経由で日本列島に渡るための「目印」となってきた島だ。毎年5月27日に現地大祭を開くのに合わせ、参加者の一般応募を行ってきたが、宗像大社が来年以降は行わない方針を決めたと昨日付の新聞に出ていた。「これで一般市民が上陸できる機会はなくなる」(東京新聞)と書いている新聞が多かったようだが、実際はそれ以外にも上陸する方法はある。福間港あたりから出ている漁船に乗れば、任意の上陸が可能なはずだ。

もう20年近く昔になるが、私もその方法でこの島に上陸したことがある。当時、脱北者関連の取材をしており、取材対象となっていた脱北者がこの島に漂着して日本の入管収容所に収容された経緯があったからだ。私はこの島が漁船が釣り人を乗せて回るポイントの一つになっていることを知り、釣り道具を抱えて(実際は釣りは行わない)、沖ノ島の波止場で降ろしてもらった。真夜中のことで、朝方までその波止場で単身、過ごした。古代から変わらないと思われる野鳥の異様な鳴き声を聞きながら、一夜を明かした。漁船が翌日昼ころ、きちんと迎えに回ってきたときにはほっとしたものである。

この島はいまも女人禁制の地で、いまどきの女性から見れば、時代錯誤の慣習を残した島と思われるだろう。男性であっても、上陸にあたっては本来は海水に浸かってみそぎを行わなければならないのだが、私はそんなことをしなければならないとも知らず(知っていてもそんなことはしなかっただろう)、そのまま帰ってきた。その後、脱北者本人を連れて、テレビ局がチャーターした船で島を訪れる機会があったが、そのときは上陸はしなかった。

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