講談社が出したネトウヨ本

個人的な感想だが、今年の出版界の大きな特徴として、大手出版社がとうとうネット右翼本に手を染めたことが挙げられる。具体的には講談社が出版したケント・ギルバード著『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』というもので、最近の出版広告(7月1日付毎日新聞)によると、「累計43万部!」ということだから、それなりに売れてはいるのだろう。だが中身は、およそ学術的裏付けもない、ただのチンピラが書いたたぐいのヨタ本である。

中国人と韓国人を貶める文章を羅列し、日本人は素晴らしいと主張する内容で、人種差別主義者が書くような内容だ。

こうした風潮が社会的に醸成されていることは事実だが、こうしたヨタ本に、これまで大手出版社が手を出すことはなかった(産経系列などを除く)。関わるのは、経営に厳しい中小出版社というのが相場が決まっていたが、「反知性主義」の波が、とうとう大手出版社にまで及んだというのが、「時代」をあらわす特徴といえよう。

例えていえば、戦前・戦中、戦争を翼賛する方向にすべての文化人・メディアが流されていった過程に酷似する。講談社など、典型的な戦争賛美の過去をもつ出版社だが、いまも臆面もなくそのような行為に手を染めているという点で、象徴的である。

私が独自に強調したいのは、それでも共産主義社会よりはまだ「マシな状況」であるという事実だ。共産主義の悪や危険性が正しく認識されていないのは、先進国では、日本くらいなものであろう。

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